研究課題/領域番号 |
18H02875
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
八木 洋 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (20327547)
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研究分担者 |
五島 直樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究チーム長 (70215482)
松本 一宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80366153)
足達 俊吾 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究チーム長 (90783803)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 糸球体 / 大動物 / 腎臓再生 / 細胞外マトリックス |
研究実績の概要 |
再生医療技術の多くは幹細胞の分化誘導を元にしており、実臨床で必要な大量の細胞を得るためには、開発に長い期間と莫大な費用を要するため恩恵を受ける患者や疾患が限られ、医療経済的な問題も指摘されている。一方人体は本来自己再生力・自然治癒力を有しているため、外部から細胞を移植することなく、自然治癒を促す新しい医療技が開発できれば、より多くの患者に早く・安価に再生医療を届けることができる。体内のすべての組織・臓器は細胞外骨格に支えられ、その組成である細胞外マトリックス蛋白が組織再生に重要な役割を担うことが知られており、再生医療の三要素のうち「足場」と「生理活性物質」の二つに大きく関与すると考えられている。「脱細胞化」という特殊な技術を用いることで細胞をすべて洗浄除去し半透明な足場骨格のみを残すことができ、海外ではすでに様々な組織で生体材料として製品化され臨床応用されているが、臓器再生に対する細胞外骨格の役割については不明な点が多い。 我々は、生体の三次元構造を損なうことなくヒトスケールの臓器骨格構造を得るための「臓器脱細胞化技術」のスケールアップに成功し、作製した骨格が生体内で欠損臓器の自己再生力を惹起し、臓器を復元できる可能性を見出した。実際に心臓・小腸・肝臓・腎臓・膵臓など異なる臓器の脱細胞化を実施した結果、腎臓が短期間で最も明確に切除部分を構造的に復元させ、さらにブタ腎部分切除に対する骨格の逢着手術後1ヶ月のCT画像検査ではその復元した腎臓様構造内部に血液の流入が証明されただけでなく、糸球体・尿細管を含む微細構造の再生が観察され、成長因子や血管新生因子などの遺伝子発現の増加も見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、生体の三次元構造を損なうことなくヒトスケールの臓器骨格構造を得るための「臓器脱細胞化技術」のスケールアップに成功し、作製した骨格が生体内で欠損臓器の自己再生力を惹起し、臓器を復元できる可能性を見出した。実際に心臓・小腸・肝臓・腎臓・膵臓など異なる臓器の脱細胞化を実施した結果、腎臓が短期間で最も明確に切除部分を構造的に復元させ、さらにブタ腎部分切除に対する骨格の逢着手術後1ヶ月のCT画像検査ではその復元した腎臓様構造内部に血液の流入が証明されただけでなく、糸球体・尿細管を含む微細構造の再生が観察され、成長因子や血管新生因子などの遺伝子発現の増加も見られた。 本研究成果は当初計画に沿って確実に進んだ結果導出されたものであり、実際にこの興味深い結果は日本泌尿器科学会の総会賞にノミネートされている。
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今後の研究の推進方策 |
本臓器骨格は臓器再生研究の新たなツールとして、また自然治癒を促す新しいコンセプトの再生医療素材として有用であると考えている。 今後は、再生された腎臓部分に実際に機能が発現しているか、慢性腎障害モデルラットを用いて詳細に検討し、構造的再生だけでなく機能的にも再生されていることを示す。 実際には5/6腎臓切除モデルでの1ヵ月に渡る観察実験を実施する予定で、現在コントロール実験を進めている。
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