研究課題
膵癌組織の間質に存在する線維芽細胞である膵星細胞(PSC)は活性化することにより膵癌細胞との癌間質相互作用を介して癌細胞の増殖、転移、浸潤を促す。PSCの活性化メカニズムに関してはPSC内のオートファジーを抑制するとPSCの活性が抑制され、その結果、膵癌細胞の転移、浸潤が抑制されることを報告した。本研究では、PSCの活性化を抑制する薬剤を新たに同定することを目的とする。本年度は、膵星細胞の活性化メカニズムに基づいたスクリーニング系を用いて、既知薬理活性物質や承認薬、未承認薬それぞれのスクリーニングを行なった。この中で候補となる化合物を選定し、実際にPSCの活性が抑制されるかをWestern blot、蛍光免疫染色で評価した。具体的には活性化PSCで発現するα-SMA、および細胞外基質であるcollagenやFibronectinの発現が、薬剤添加群においては低下していた。PSCが産生するサイトカインの発現は薬剤添加群で低下した。また、癌細胞と膵星細胞の間接共培養モデルでは癌細胞単独に比べ癌細胞の浸潤が増強されるが、薬剤添加PSCと共培養した群では浸潤細胞数が減少した。スクリーニングから得られた候補化合物は、PSCの活性化を実際に抑制し、癌間質相互作用を抑制し膵癌細胞の増殖・浸潤を抑制することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は作成した薬剤スクリーニング系の再現性の評価に加え、この系から得られた候補化合物の評価を行い、in vitroで実際にPSCの活性が抑制されることを確認した。in vivoでの治療効果判定を行なっており、現在論文作成中であり、概ね順調に進展している。
候補化合物のin vivoでの腫瘍抑制効果を評価する。同所移植マウスモデル、PDXマウスモデルを作成し、候補化合物を投与した際の腫瘍形成能、遠隔転移形成能の比較を行う。実臨床での使用も考慮し、既存抗癌剤との併用治療での腫瘍抑制効果も評価する。またスクリーニング系から得られた候補化合物に共通するシグナル経路からの再分類を行い作用メカニズムの検討も行う。
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