研究課題/領域番号 |
18H02883
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
八代 正和 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (60305638)
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研究分担者 |
中前 博久 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30364003)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スキルス胃癌 / 癌間質形成 / 骨髄由来間質細胞 / 治療標的 |
研究実績の概要 |
GFP陽性骨髄を移植・定着させたヌードマウスに、当科で樹立した胃癌細胞株OCUM-2MLNを胃へ移植した同所移植モデルを作成した。作成されたマウス胃癌組織を間質細胞のマーカーであるα-SMAを用いて染色を行ったところ、GFP陽性細胞のなかにα-SMA陽性細胞が存在することを確認した。従って、癌微小環境に骨髄由来間質細胞が動員されていることが明らかになった。骨髄由来間質細胞は正常部分の胃粘膜にはほとんど動員されていなかった。スキルス胃癌細胞上清は骨髄由来間質細胞の遊走能を亢進させることから、スキルス胃癌の微小環境において、癌細胞の産生する因子が骨髄細胞を癌細胞周囲にリクルート(遊走・分化)しCAFや脈管細胞に分化させ、癌細胞自らの増殖進展に適した環境を構築していることが示唆される。 一方、GFP陰性であるがα-SMA陽性細胞も存在し、癌幹細胞由来の癌間質細胞の存在も考えられた。また、GFP陰性細胞の中にはCD31陽性やD2-40陽性細胞も認められ、これらの事実は、癌幹細胞の一部が、脈管形成内皮細胞に分化し、癌間質の構成に関与しているている可能性が示唆された。組織学的な陽性率を見ると、癌間質の形成に関わる癌幹細胞の割合は低頻度と考えられた。 癌微小環境に骨髄由来間質細胞が動員されていることの結果から、今後の検討として、間質細胞が癌組織にリクルートすることを抑制する治療法や癌幹細胞が間質細胞に分化にすることを抑制する治療の有用性の検討の必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨髄由来細胞がスキルス胃癌における癌間質形成に関与しており、骨髄細胞のスキルス胃癌微小環境へのリクルートが癌悪性度に関与することから、このリクルート抑制が、治療法開発に応用できることが示唆されたことは、計画が概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
骨髄細胞のスキルス胃癌微小環境へのリクルート機序の研究や、癌幹細胞が間質細胞に分化にする機序の研究を行い、さらにそれに基づいた治療法の研究にも取り組む。
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