研究課題
Sqstm1とNrf2遺伝子の二重欠損(DKO)マウス(特許第6020791号)のNASH発症には臓器間の連関が存在する.過食による腸内細菌叢が変化(Sqstm1欠失に関連),これによるLPSの産生増大,腸管のバリア機能低下(Nrf2欠失に関連),Kupffer細胞(肝マクロファージ)のLPSに対する貪食能の減弱と過剰な炎症応答反応が重要な因子であることが明らかになっている.さらに,余剰のLPSは肝星細胞のToll-like receptor 4の下流シグナルの活性化により,増殖因子の産生増大を誘導し,炎症性肝障害のもとに肝発癌を促進させることが明らかになりつつある.新規の研究成果として,DKOマウスに高カロリー食として高脂肪/ショ糖食を24週間摂餌させると,NASH肝病変の進展が加速し,全例に強い肝線維化と50%の頻度で肝癌(通常食の4倍の頻度)が認められることが判明した.そこで腸管上皮特異的Nrf2遺伝子レスキュ-マウスを作製して,各種表現型の解析に着手した.通常食の摂餌では体重増加は全身DKOマウスと大きな変化が認められなかった.肝NASH病態を病理組織学的に解析し,SAF scoreでスコア化した.レスキューマウスでは,脂肪化スコア 0.40±0.24点,活動性(炎症)スコア 1.00±0.32,線維化スコア1.40±0.51点であり,全身DKOマウスと比較して脂肪化は軽度軽快傾向が見られたが,活動性,線維化については差は認められなかった.腸管透過性を評価するためFITC-デキストランを経口投与し,その後血中濃度を測定した.全身DKOマウス61.9±6.2 AUCに対し,Nrf2腸管特異的レスキューマウスでは47.5±13.0 AUCと低下(改善)傾向を認めたが有意な差は認められなかった.高カロリー食の摂餌における表現型は解析中である.
3: やや遅れている
作製したNrf2遺伝子腸管上皮細胞特異的レスキューマウスにおいて,予想されたNASH肝病変発症の遅延や腸管透過性亢進の低下(改善)などの表現型の変化が乏しかった.そこで現在,作製されたマウスのゲノタイピングによる解析調査を実施している.
ゲノタイピングによる解析調査に基づき,Nrf2遺伝子について,DKOマウスに腸管上皮細胞における細胞特異的遺伝子レスキュ-マウスを再度にわたり作製し, 本遺伝子レスキュ-マウスにおける表現型の変化について解析する.腸管上皮細胞特異的レスキューマウスと全身欠失マウスにおいて,NASHと肝発癌の頻度を比較し,肝発癌の抑止におけるNrf2の役割を解明していく.
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