研究課題/領域番号 |
18H02884
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
山本 雅一 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (60220498)
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研究分担者 |
柳川 徹 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10312852)
有泉 俊一 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (40277158)
徳重 克年 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (60188729)
蕨 栄治 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70396612)
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90241827)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | NASH / 肝癌 / 遺伝子レスキューマウス / LPS / 腸管透過性 / 高カロリー食 |
研究実績の概要 |
筑波大学と連携してNASHと肝癌を自然発症するSqstm1およびNrf2遺伝子二重欠失(DKO)マウスを用いて,腸内細菌の dysbiosisとLPS増加による肝発癌の誘導に対して,Keap1-Nrf2 pathwayの肝発癌の抑止の生体防御機構の詳細について解明している. 腸管上皮Nrf2の肝発癌における役割を明らかにするため,腸管上皮細胞にのみNrf2を発現する腸管上皮特異的Nrf2レスキューマウスの作製を試みた.Nrf2ノックインマウス(KIKI)の繁殖過程で遺伝子型判定(ジェノタイピング)に一部不具合があり,確認と修正のため繁殖に遅れが出たが,Vill-Creマウスとの掛け合わせにより腸管上皮特異的Nrf2遺伝子レスキューマウス(最終遺伝子型Nrf2KI/KIかつVil-cre/+)の作製に成功した.今後,繁殖を継続する. この間,DKOマウスに60%高脂肪食を26週間摂餌し肝発癌促進モデルを作製し,解析を行った.高脂肪食(HF)群は,通常食(NC)群と比較して更に高度肥満(HF:57.5 g,NC: 47.7 g)を呈し,NASH病態のSAF scoreでは脂肪化(HF: 2.2, NC: 0.9),炎症(HF: 1.9, NC: 0.8),線維化(HF: 3.9, NC: 0.6)といずれも高値であったが,特に線維化が高度であった.更に,HF群では35%(16例/46匹)に腫瘍が発生し,NC群の12%と比較して顕著に発癌が促進された. 本学消化器外科で外科手術により収集された,NASH肝癌50症例,慢性C型肝炎由来肝癌50症例,大腸癌肝転移50症例のヒト肝癌臨床標本について,HE染色,p62,Keap1,LC3Aの免疫染色を行った(Genostaff社に一部外部委託).現在,免疫組織学的な視点から癌部非癌部の染色パターンを解析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Nrf2ノックインマウス(KIKI)の繁殖過程で遺伝子型判定(ジェノタイピング)に一部不具合があり,確認と修正のため繁殖に遅れが出たが,腸管上皮特異的Nrf2遺伝子レスキューマウスの作製に成功した.今後,繁殖を継続し実験 に供する.新規に作製したNrf2腸管特異的レスキューマウスの表現型について解析中である.
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今後の研究の推進方策 |
腸管上皮特異的Nrf2レスキューマウスについては,解析に十分な個体数が揃った段階で(各群10-20匹程度を想定),通常食を対照として60%高脂肪食摂餌を開始する.32週齢で解剖し,全身p62およびNrf2遺伝子二重欠失(DKO)マウスと,NASH肝癌の個数,大きさ,悪性度,病理学的特徴などの表現型を比較解析し,腸管上皮細胞のNrf2レスキューがNASHおよび肝発癌を抑止し得るかどうかを解析する.また,これらのマウスの糞便を回収して腸内細菌叢のプロフィールを解析し,血清・糞便中のLPS体内動態と腸管上皮細胞のNrf2がどのように関連するかを明らかにする. ヒト肝癌臨床標本を用いた解析については,multiubiquitin, Masson trichromeの免疫染色を追加し,既に染色したp62,Keap1,LC3Aとの位置関係,発現パターンの相同性などについて引き続き解析を行う.また,免疫染色の解析結果と患者情報(病歴,血液検査結果,予後情報)などとの関係性について統計学的手法を用いて解析する.
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