研究課題/領域番号 |
18H02885
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
藤元 治朗 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (90199373)
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研究分担者 |
小嶋 聡一 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, ユニットリーダー (10202061)
石戸 聡 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10273781)
宮下 正寛 (裴) 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30423883)
宇山 直樹 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (70402873)
波多野 悦朗 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80359801)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 術後癒着 / IL-6 / 線維化 / IL-6受容体 / 抗体 |
研究実績の概要 |
マウス腸管癒着モデルを用い、現時点で以下の点が明らかになりつつある。腹腔内においていかなる細胞が癒着の根本である線維形成に関与しているか不明であったが、X1細胞である可能性が高い。X1は腸管癒着手術(腸管部分焼却術:以下癒着手術)の刺激にて増殖・分裂、またX1細胞自身が線維産生(線維化)している可能性が示された。培養X1細胞系を用いて遺伝子解析すると線維化に重要な因子であるTGF-β,PDGFなどに対する受容体を高発現していることが判明した。またこのX1細胞は腸管において筋線維芽細胞に裏打ちされていた。肝臓の線維化には肝星細胞が深く関与し、星細胞自身が線維組織になることが明らかとなっているが、術後癒着においてX1細胞が線維形成にかかわることが明らかになりつつある。(論文投稿中でありX1細胞と表現しました)
主に線維形成細胞の同定に関しては免疫染色・蛍光2重または3重免疫染色により研究を実施してきた。現時点でX1細胞の可能性が高くなったので、X1細胞に特異的に発現する遺伝子の下流にcre-loxP/ GFPトランスジェニックマウス(以下Tx-mouse)を用い癒着実験を実施、線維形成細胞はX1細胞由来であることをつきとめた。 さらにリガンド側の細胞の候補も同定しつつあり(X2細胞)、X2-X1細胞の相互作用が線維形成分子機構の一つと考えられる。X2細胞に対する抗体を使用するとX2細胞の浸潤が著明に抑制され、かつ癒着が制御されていた。この実験系においてサイトカイン・ケモカイン・IFN-γ・PAI-1・TGF-βなど重要分子の動態を検証した結果、IL-2が線維形成の起点となることをつきとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
術後癒着を形成する細胞の同定に成功した。このことによりこの細胞のcell lineを用いることが可能となり、in vitroの実験も併用可能となり、基礎的分子機構解明に役立った。また、gene chip解析より得られたIL-6シグナルの下流を検索することにより新たな重要分子が発見され、IL-6受容体抗体とともに臨床研究に向けての開発の根拠となった。現時点ではマウス癒着モデルではIL-6のリガンド抗体では癒着制御効果はみとめないものの、IL-6の抗受容体抗体は著明に術後癒着を抑制した。このことよりIL-6受容体抗体の用量設定・安全性に対する研究を展開中である。
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今後の研究の推進方策 |
1.IL-6受容体抗体の臨床研究に向けての課題の解決、具体的には、①人における抗体使用量の推測、②周術期の易感染状態を考慮、免疫を制御することによる感染症併発のリスクに対する対策、③創傷治癒遅延の可能性の判定(現在の皮膚欠損モデルでは起きていないが、腸管吻合時の創傷治癒の問題) 2.新規抗体の開発 3.非侵襲的癒着診断機器のヒトにおける検証
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