研究課題/領域番号 |
18H02887
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金光 ひでお 京都大学, 医学研究科, 助教 (60810166)
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研究分担者 |
湊谷 謙司 京都大学, 医学研究科, 教授 (20393241)
池田 義 京都大学, 医学研究科, 准教授 (40281092)
柴 祐司 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (70613503)
升本 英利 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (70645754)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 心臓再生医療 / iPS細胞 / バイオエンジニアリング |
研究実績の概要 |
本研究では、これまで主にパラクライン効果による優れた治療効果が動物実験において示されている、「ヒトiPS細胞由来心血管系細胞多層体」による治療効果をさらに高め、長期的な治療効果を得るために、ホスト-グラフト間の機能的(電気的・機械的)同期を評価するシステムを、in vitroの評価系を用いて作製する。さらに、心拍数がヒトと近いミニブタを用いて確立し、さらにペーシングなどの方法により、効率的かつ安全な機能的同期法を開発することを目的とする。 本年度は、GCaMPグラフト移植におけるラット心臓への同期評価法の確立に関する研究開発を行った。その結果、ホスト心臓の拍動に応じてiPS細胞由来心筋シートが収縮する傾向を認めたが、同時に心筋シート自身の電気伝導速度はホスト心臓に比べて非常に遅いことを見出した。その原因の一つが、iPS細胞由来心筋細胞のイオンチャネルを含む電気生理学的未成熟性であることを定量PCR等により確認した(内向き整流カリウム電流を担うIK1チャネルをコードするKCNJ2遺伝子の低発現など)。この点を解決することが電気生理学的な同期を得るために必要であると考えられた。本年度中に、他研究グループより電気刺激トレーニングによりiPS細胞由来心筋細胞および三次元構造体の電気生理学的成熟が得られることが報告された(Nature, 2018)、これを受けて、次年度は電気刺激を含む物理トレーニングを多層体などの三次元組織に負荷することによる機能成熟およびホスト-グラフト同期を得ることを目的とした研究開発を行う。また、本年度は細胞シートストレッチ装置を用いたin vitroでの伸展刺激同期性心筋シート収縮を検討したが、これについても心筋シート自身の未成熟性により十分な同期率は認められなかった。次年度以降に成熟化多層体を用いた検討を引き続き行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPS細胞由来心筋シートにおけるカリウムチャネル等の未成熟性によると思われる刺激電動速度の遅延を、定量PCRなどの方法により明らかにすることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
1.電気刺激によるGCaMPグラフトの同期率改善に関するin vitroでの検討 電気刺激によるiPS細胞由来人工心臓組織の電気生理学的な機能成熟に関して、前年度中に他研究グループより報告された(Ronaldson-Bouchard, Nature 2018)。この知見を応用して、我々の多種心臓細胞を含む心臓組織グラフトに対し種々の電気刺激トレーニング培養を行い、前年度に導入した細胞シートストレッチ観察装置を用いて、GCaMPグラフトに対する組織成熟度および同期率の改善について評価する。前年度の知見も含め、最終的に同期に最も適したin vitroのトレーニング培養条件を同定する。 2.ミニブタモデルを用いた心筋梗塞および心臓組織グラフトの移植における電気的・機械的同期率の変動に関する検討 経食道エコーを用いて、心筋梗塞による壁運動同期率の低下、あるいは心臓組織グラフトの移植による同期率の回復を観察及び定量することにより、ペーシング等の方法による移植後同期率評価に資するシステム構築を行う。正常ブタ、心筋梗塞ブタおよび心臓組織グラフト移植ブタにて行い、撮像条件の最適化を行うとともに、各条件での機械的同期の度合いを評価する。
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