研究課題
モノクロタリン(MCT)誘発免疫欠損肺高血圧マウスBALB/c Slc- nu/nu(homo)では、経静脈的なヒト臍帯血細胞移殖により肺高血圧が改善し、その改善には臍帯血中の血漿成分ではなく細胞そのものが必要であった。まず移植した細胞のマウス体内動態について検討した。ヒト臍帯血細胞をDi-I(カルボシアニン蛍光)にてラベルして経静脈的にモデルマウスに投与し、レシピエントマウス肺内での存在、動態(viability, activity)を、移植 3時間後、24時間後および 7日後と経時的に追跡した。体内動態は照射条件の違いに左右されにくいIVIS imaging法の励起光量と蛍光量の比にて評価した。すると、投与した臍帯血細胞は投与直後をピークに投与24時間後においても投与された単核球は、マウス体内で一度肺組織に留まり、その後徐々に減少し肝臓・脾臓に再度捕捉されたが、全経過において有意に肺内に集積していた。次いで、移植したヒト臍帯血細胞の行方と役割について解析した.モデルマウスを犠牲死させ、肺組織を摘出し、vWF染色にて血管内皮細胞を染色して蛍光顕微鏡にて観察した。すると、細胞は肺小動脈内皮細胞の近傍に検出された。投与された単核球の効果を検証するためRT-PCR法にて肺組織中のVEGF mRNAを測定し、肺組織内で血管新生のために動員された可能性のある細胞を検討した。すると、肺組織内の肺小動脈内皮細胞の近傍に移植されたヒト臍帯血単核球細胞が観察され、肺組織のVEGF濃度は高かった。今後は肺高血圧が改善する機序について検討する。
2: おおむね順調に進展している
当初、本研究の肺血管床減少性レシピエント動物モデルとして想定した、左肺動脈の上葉枝または主肺動脈をクリップして閉塞させた低容量肺血管床の左肺モデルマウスの作製困難さ故に、モノクロタリン(MCT)誘発肺高血圧モデルマウスを用いることとしたが、その後は研究課題を目的としたところのpreliminary dataを出せるに至っている。
次年度は本研究の最終年度にあたるので,これまでの2年間の研究を進めて,免疫欠損マウス(BALB/c Slc- nu/nu)のモノクロタリン肺血管傷害モデルを用いて,当初の目的としたヒト臍帯血細胞移植により傷害された低容量肺血管床の形態的・機能的な改善が得られるか否か,得られるならその改善効果機序について,特にパラクライン効果について,そして経静脈的に移植した臍帯血細胞の体内動態と役割についてまとめ研究を行う。蛍光色素(CMTMR)でラベルしたヒト臍帯血細胞を免疫欠損マウス(BALB/c Slc- nu/nu)のモノクロタリン誘発肺高血圧モデルに経静脈的に移植し,経時的な移植から5日後までのレシピエントマウス体内での動態を追跡し,特に肺内での臍帯血細胞の動態追跡したデータを評価している。移植したヒト臍帯血細胞の体内動態とレシピエント内の動態分布を見るため,蛍光標識したヒト臍帯血単核球細胞をIVIS imagingを用いて追跡研究し,臍帯血を投与したモノクロタリン肺高血圧マウスと投与しない肺高血圧マウス群において,それぞれ臍帯血投与から24時間後の体内臓器分布,特に肺組織への局在について検討している。それらの研究データを解析し、肺血管床改善効果の機序と移植細胞の役割について総括・分析して,その臨床応用についても考察する。
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