研究課題
独自に開発したマウス脊髄虚血後遅発性対麻痺モデルを用い、硫化水素ガス吸入療法による神経障害抑制効果を見出したことを契機に、さらに研究を進めたところ低体温との併用により硫化水素ガス吸入による神経保護効果が消失することが明らかとなった。今回の申請研究では、硫化水素ガス吸入療法による神経保護効果を発揮するタンパク分子を検出すべくプロテオーム解析を用いて検討することを目的とした。マウスに5分間の脊髄虚血侵襲を与え、24時間後に硫化水素ガス80ppmを4時間吸入させた。C群では低体温(25度)とH群では常温(35.5~36.2度)とし、硫化水素ガス吸入2時間後に犠殺し脊髄を摘出した。摘出した脊髄を用い二次元電気泳動を行った。今回の結果では、6分間虚血後に24時間以内で全てのマウスが歩行可能であった(BBBスコア3点以下)。虚血後24時間目から4時間硫化水素ガスを吸入させたが、全てのマウスが生存し、脊髄を採取することができた。H群でC群と比較し11個の蛋白質が検出された(銀染色)。マウスに虚血後硫化水素ガス80ppm吸入させると代謝が低下し低体温に陥るため、吸入チャンバーを加温し低体温を防止した。以前の研究から、硫化水素ガス吸入療法による虚血後脊髄神経保護効果は、従来中秋神経細胞保護に有益であるとされた低体温により消失することが分かっていた。今回、二次元電気泳動により低体温群と常温群の両群間で蛋白発現に差が出たことにより今後質量分析により候補蛋白を明らかにすることが可能となった。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度の研究では、脊髄虚血後の硫化水素吸入により低体温になることを防止すること(チャンバーの加温)ならびに至適温度が明確になり実験の遂行が円滑になった。さらに摘出脊髄の二次元電気泳動により両群間で差が出たことから、低体温による蛋白発現が異なることが示唆され、本申請研究の目的に沿っていると考えられた。
平成30年度の二次元電気泳動の結果をもとに、平成31年度は質量分析による蛋白解析を行うこと、蛋白発現と温度との関係を検討する。
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Free Radic Biol Med
巻: 131 ページ: 243-250
10.1016/j.freeradbiomed.2018.12.003