研究課題/領域番号 |
18H02891
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
樋田 泰浩 北海道大学, 大学病院, 准教授 (30399919)
|
研究分担者 |
菊地 奈湖 (間石奈湖) 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (00632423)
樋田 京子 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (40399952)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 血管新生 |
研究実績の概要 |
腫瘍組織から分離培養した血管内皮細胞と正常組織から分離培養した血管内皮細胞を用いて細胞内代謝経路の違いを検討した.その結果,Carbonic anhydrase 2 の発現が腫瘍血管内皮細胞で亢進しており,特異的な代謝経路が活性化されていることが明らかになった.そこで,Carbonic anhydrase 2を阻害するアセタゾラマイドを用いて実験を行った.培養細胞を用いたin vitro実験では,正常組織から分離培養した血管内皮細胞は腫瘍組織から分離培養した血管内皮細胞よりも低酸素,高乳酸状態に対して感受性が高かった.一方,腫瘍組織から分離培養した血管内皮細胞は低酸素,高乳酸状態に耐性であったが,Carbonic anhydrase 2を阻害するアセタゾラマイドを添加すると,正常組織から分離培養した血管内皮細胞と同様に低酸素,高乳酸状態に対して感受性になった. 異種移植腫瘍動物実験モデルでもin vitroと同様の結果が得られた.アセタゾラマイドはすでに安全性が確立された緑内障やメニエール病の治療に使われてきた既存薬であり,新たな薬効として腫瘍特異的な血管新生阻害剤としてドラッグリポジショニングすることが可能と考えられた. また血管新生阻害剤を用いた動物実験モデルで腫瘍浸潤T細胞の大幅な増加を見出した.これは現在適応拡大競争の続く免疫チェックポイント阻害剤の効果増強に利用可能である可能性を示している.腫瘍血管新生効果を示したアセタゾラマイドの免疫賦活効果についても検討を始めている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腫瘍組織から分離培養した血管内皮細胞と正常組織から分離培養した血管内皮細胞を用いて,腫瘍特異的な血管新生阻害の分子標的としてCarbonic anhydrase 2 をどうていすることができた.また,Carbonic anhydrase 2を阻害する既存薬であるアセタゾラマイドを用いて培養細胞を用いたin vitro実験と異種移植腫瘍動物実験モデルを用いたin vivo実験でアセタゾラマイドが腫瘍特異的な血管新生阻害剤としてドラッグリポジショニングすることが可能であることを見出すことができた. 更に,アセタゾラマイドを併用することで免疫チェックポイント阻害剤の効果を高められる可能性を示唆する結果を得ることができた.
|
今後の研究の推進方策 |
アセタゾラマイドを血管新生阻害の分子標的として,あるいは免疫チェックポイント阻害剤の効果増強を目的とした併用薬として開発するために,前臨床試験を進め,医師主導治験への導出を行う.
|