研究課題/領域番号 |
18H02893
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
芳川 豊史 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (00452334)
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研究分担者 |
進藤 岳郎 京都大学, 医学研究科, 助教 (10646706)
伊達 洋至 京都大学, 医学研究科, 教授 (60252962)
吉澤 明彦 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80378645)
祝迫 惠子 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (70625300)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肺移植 / 免疫抑制 / 慢性拒絶 / 自然免疫 / 新規治療 |
研究実績の概要 |
肺移植の長期予後を阻む最大の原因は、「慢性拒絶」が主体の、慢性期移植肺機能不全(CLAD)であるが、その病態は未だ不明で有効な治療法もない。研究代表者は、平成31年度は、これまでに確立した小動物ラット左片肺移植モデルを用いたCLAD解明のための予備実験をもとに、CLADの病態に迫る研究を行うことを大きな目標として本研究を始めた。 肺は、外界と直接通じる臓器のため、免疫力が元来強く拒絶を起こしやすいが、感染症を併発する可能性も高い。よって、肺移植では、感染に対する免疫力を低下させない「選択的な免疫抑制」が重要である。そこで、「感染免疫を低下させない免疫抑制剤」として、免疫抑制剤としては新規のメカニズムを有する、MEK阻害剤に着眼し、平成30年度では、研究代表者が確立した小動物CLAD解明モデルに対して、MEK阻害剤(Trametinib)を投与する群との比較検討を行うための予備実験を行い、各群における免疫抑制剤の投与量を決定した。平成31年度には本実験に移行可能であり、移植後の生存結果だけでなく、Flexiventを用いた呼吸機能の検討、各タイムポイントにおける移植肺を用いた、フローサイトメトリー法による各種免疫細胞の動態、さらには、病理学的検討におけるトラメチニブの新規免疫抑制剤としての効果について、検討を行った。 現在までに、トラメチニブの予想通りの効果を確認できたため、本結果について、その成果の一部を論文化することができた。なお、本研究については、造血幹細胞移植や他臓器・細胞移植などの研究者とコラボレーションを行っており、包括的な知財の獲得などを目指した点からも、種々の方面と交渉を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、「感染免疫を低下させない免疫抑制剤」として、免疫抑制剤としては新規のメカニズムを有するMEK阻害剤に着眼した研究であり、開発において困難が予想されたが、現時点までは、一定の成果が得られていると考えられるため。 しかしながら、今後の臨床応用などを考慮すると、研究の推進だけでなく、各種企業とのさらなる調整が必須であり、現在の交渉を継続して進める必要がある。 なお、本研究結果は、肺移植以外の臓器移植にも応用可能であり、今後、肺以外の臓器移植における新規免疫抑制療法への展開を進める方針であり、研究のスピードを緩めるわけにはいかず、予想以上の進捗とはいいがたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、「感染免疫を低下させない免疫抑制剤」として、免疫抑制剤としては新規のメカニズムを有する、MEK阻害剤を軸に、肺移植に おけるCLAD撲滅のための新規免疫抑制法を開発するための基礎研究を継続して行う。具体的には、本研究期間では、小動物CLAD解明モデルを用いて、MEK阻害剤投与による 治療効果の多角的検討を行う。なお、MEK阻害剤として、トラメチニブを継続して第一候補とするが、コビメチニブなど別の同種薬剤の研究も進める。 これまでに確立した、MEK阻害剤にサイクロスポリンを併用したプロトコールと、Flexiventを用いた呼吸機能および病理学的検討モデルをもとに、平成31年度では、MEK阻害剤の有用性をさらに詳しく多角的に検討し一定の結果を得て、一部の結果を論文化した。令和2年度においては、さらなるエビデンスを積み重ねるために、各タイムポイントにおける末梢血、肺、脾臓、胸腺での、MEK-ERK pathwayに関連した炎症性サイトカインやリンパ球の増殖に関与するサイトカインの測定、FACSでの細胞分析について詳細を確認する予定である。また、同種薬剤の検討にも本格的に取り組む予定である。とくに、臨床肺移植におけるCLADの解明につながるような、臨床画像の解析や抗体関連型拒絶における抗体産生についても検討を追加し、トランスレーショナルリサーチになるように試みたい。今回の基礎データをもとに、可能であれば、臨床に直結するようなCFSE-MLRを行うことも考慮する。 なお、種々の関連部門に適宜相談を行い、知財の取得や臨床応用における道筋についても引き続き探索する予定である。
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