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2019 年度 実績報告書

全身麻酔による脳内神経炎症機構の解明 -高齢者に最適な麻酔法の確立をめざして-

研究課題

研究課題/領域番号 18H02898
研究機関高知大学

研究代表者

河野 崇  高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 准教授 (40380076)

研究分担者 横山 正尚  高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (20158380)
村田 和子  高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (50325429)
高橋 章  徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (90304047)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード術後せん妄 / 術後神経認知異常
研究実績の概要

高齢ラット全身麻酔モデルにおけるミクログリアの活性化とin vivo PETイメージング解析を行った。若年2-4ヵ月齢および高齢24-25ヵ月齢SD系雄性ラットを用いた。全身麻酔モデルとして、イソフルランを2時間吸入させた。対照群は酸素のみ吸入させた。認知機能は、1、3、7、14日後に新奇物体認識試験および恐怖条件づけ試験を用いて評価した。脳内神経炎症は、全身麻酔14日後認知試験後に脳の各部位を摘出し、炎症性サイトカインのmRNA発現量をRT-PCR法で, 蛋白量をELISA法で評価する。PET試験は [11C] (R)-PK11195を用いて術前・術後1、7日後に実施した。その結果、以下のことが明らかとなった: (1) イソフルラン麻酔後の脳内神経炎症、認知障害と術前後のPET活性との間に有意な相関関係が認められた。(2) 脳内神経炎症が生じやすい部位は、海馬および前頭前野であった。(3) イソフルランの濃度・投与時間の違いは、PET活性に大きな影響を与えなかった。(4) これらの変化は若年と比較して高齢ラットでより顕著であった。また、PETイメージング法は, 動物に対する侵襲を最小限に留め、脳内神経炎症の時間的・空間的解析ができる点が優れていることが明らかとなった。
高齢ラットの麻酔後脳内神経炎症に及ぼす麻酔方法の影響についても検討した。術後のPET活性を指標としてイソフルラン、セボフルラン、プロポフォールが及ぼす影響を検討したが、麻酔方法の違いによる差異はなかった。
単離ミクログリア細胞膜電位に及ぼすイソフルランの影響および細胞内シグナルの解析を行った。臨床使用濃度のイソフルランによりミクログリア内膜の過分極が生じた。イソフルランの効果にはCa2+/カルモジュリン経路を介することが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

高齢ラット開腹手術モデル後の脳内神経炎症評価としてのPETイメージング法を確立することができた。次年度も研究計画どおりに研究を進める予定である。

今後の研究の推進方策

パッチクランプ法を用いた全身麻酔薬の脳内神経炎症の細胞内メカニズム解析
1. ミクログリアの活性化について細胞膜電位を指標として麻酔・加齢の影響を検討する。2. 各脳部位のミクログリア活性変化と脳内炎症・PET活性・認知機能との相関を検討する。3. ミトコンドリア 活性の麻酔・加齢の影響を測定し, 麻酔薬の作用部位を検討する。4. 細胞内シグナル伝達経路を解明するために様々な薬剤を用いる。NMDA受容体拮抗薬, PKA阻害薬, PKC阻害薬, CaMKII阻害薬, Ca2+阻害薬を灌流投与または電極内液に用いる。5. 各薬剤の効果に及ぼす加齢の影響を検討する。
高齢および若年ラットの各脳部位を摘出し, 酵素法で細胞を分離する。その後, Percoll密度勾配遠心法を用いてミクログリアを単離する。 単離したミクログリアはアルブミンを含む培養液を用いて24時間培養し, 安定した状態で電気生理学的測定を行う。また, ミクログリアをMSED (+) bufferに懸濁し, nitrogen cavitation bombを用いて破砕後, 遠心分離を繰り返し, ミトコンドリアを回収する。浸透圧ショックを用いて精製されたミトコンドリアの外膜を破壊し, Mitoplast を生じさせる。Mitoplastによりパッチクランプ法でのミトコンドリア膜電位測定が可能となる。パッチクランプ法のwhole-cell current-clamp法を用いてそれぞれの膜電位を活性化の指標とする。膜電位をリアルタイムに測定しながらATPを灌流することにより膜電位の変化を記録する。
また、単離ミクログリア細胞膜からのパッチクランプ記録を用いて麻酔薬の影響および細胞内シグナルを解析し明らかにする。細胞内シグナル解析から有用性が示唆される薬剤に関しては in vivo PETイメージング試験でその効果を検討する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Acute postoperative pain exacerbates neuroinflammation and related delirium-like cognitive dysfunction in rats2019

    • 著者名/発表者名
      Koyama T, Kawano T, Iwata H, Aoyama B, Eguchi S, Nishigaki A, Yamanaka D, Tateiwa H, Shigematsu-Locatelli M, Locatelli FM, Yokoyama M
    • 雑誌名

      J Anesth

      巻: 33 ページ: 482-486

    • DOI

      10.1007/s00540-019-02635-3

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Acute and Long-Term Effects of Haloperidol on Surgery-Induced Neuroinflammation and Cognitive Deficits in Aged Rats2019

    • 著者名/発表者名
      Nishigaki A, Kawano T, Iwata H, Aoyama B, Yamanaka D, Tateiwa H, Shigematsu-Locatelli M, Eguchi S, Locatelli FM, Yokoyama M
    • 雑誌名

      J Anesth

      巻: 33 ページ: 416-425

    • DOI

      10.1007/s00540-019-02646-0

    • 査読あり
  • [学会発表] 高齢者の認知機能2020

    • 著者名/発表者名
      河野 崇
    • 学会等名
      第 32 回日本老年麻酔学会
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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