研究課題
これまでの検討より、脳内報酬回路を担っている側坐核ドパミンD1受容体陽性中型有棘神経 (D1-MSN) の特異的活性化ががんの進行を抑制性に制御することを明らかにした。そこで今年度は、脳内報酬系の賦活による腫瘍免疫制御機構について明らかにする目的で、薬理遺伝学的手法を応用し、側坐核 D1-MSN の特異的活性化による末梢リンパ球の機能変化について解析を試みた。担がんマウスを用い、側坐核 D1-MSN の特異的活性化により抗腫瘍効果が認められた条件下、脾臓リンパ球の変化について検討を行ったところ、免疫チェックポイント関連抑制性受容体が発現する CD8 陽性 T 細胞数の有意な減少が認められた。また、免疫チェックポイント関連抑制性受容体の発現細胞数と腫瘍体積との間の相関関係について解析したところ、有意な正の相関が認められた。本研究より、側坐核内 D1-MSNの活性化により、CD8 陽性 T 細胞の疲弊化の抑制および抗がん免疫の促進が誘導されることが明らかとなった。一方、がんの進行過程における “末梢-脳-末梢” 免疫連関機構の中核を担う “がん増幅脳内ネットワーク” の探索を試みる目的で、神経細胞活性化依存的に発現増大する転写因子である cFos 遺伝子プロモーター制御下でタモキシフェン誘導型 Cre 酵素である CreERT2 の発現誘導が可能な遺伝子改変動物を用いて、タモキシフェン存在下で担がん状態における結合腕傍核内活性化神経細胞特異的に M4Di を発現させ、薬理遺伝学的手法に従い、結合腕傍核内活性化神経細胞の抑制を行ったところ、腫瘍増殖能に変化が認められた。以上、今年度の取り組みにより、がん感受性脳細胞操作により脳-末梢免疫連関の一部が明らかとなり、こうした取り組みは、がん増幅脳内ネットワーク解明の一助となると考えられる。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Mol Brain
巻: 15 ページ: 17
10.1186/s13041-022-00902-1