研究実績の概要 |
昨年度までの研究により,マウス頭部外傷モデルにおいて,"再生阻害因子" RGMaとその受容体であるNeogeninのmRNA発現が脳損傷直後に減弱し,その後すぐに正常レベルまで改善することが明らかになった。興味深いことに,ミクログリア,マクロファージの細胞マーカーの経時的変化と類似しており,炎症性サイトカインの早期発現誘導とは負の相関にあった。今年度は,頭部外傷後のRGMa発現に関与する分子群をより詳細に網羅的に解析するために,次世代シークエンサー解析(NGS)を施行した。頭部外傷1日目(T1)と7日目(T7),並びにシャムの3群(各n=3)の脳損傷部からtotal RNAを抽出し,1500ngからシークエンスライブラリを作成した(TruSeq Stranded mRNA)。シークエンスはIllumina社Miseqにて行い,Strand NGS(Strand Life Sciences Pvt. Ltd., Bangalore, India)を用いてバイオインフォマティクス解析をした。NGSの結果,シャムと比較して2倍以上に発現が増強するmRNAがT1群では808、T7群では674分子同定された。一方,シャムと比較して1/2以下に発現が低下したmRNAはT1群とT7群でそれぞれ283,51分子あった。RGMaに関しては,real-time PCRの研究成果を裏付ける形でT1群で低下していた。頭部外傷後に大きく発現が変動する遺伝子に対してGene Ontology解析,Pathway解析を行った結果,ミクログリア,マクロファージの活性化や炎症機構,細胞遊走に関わり,RGMaの発現動態と関連し得る有力な分子メカニズムが浮き彫りになった。
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