研究課題/領域番号 |
18H02905
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
佐和 貞治 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10206013)
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研究分担者 |
森山 潔 杏林大学, 医学部, 准教授 (10296717)
木下 真央 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20816384)
清水 優 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40800131)
天谷 文昌 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60347466)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 緑膿菌 / ガンマグロブリン療法 / 細菌性肺炎 / 三型分泌システム / 受動免疫 / 重症肺炎 |
研究実績の概要 |
本研究は、ヒト緑膿菌肺炎治療に有効な非抗菌剤治療の開発として、特殊ガンマグロブリン製剤の開発につなげることである。高齢化社会進行や医療高度化に伴い、致死的な細菌性肺炎が増加している。中でも日和見感染菌として代表的な緑膿菌による肺炎は、抗菌剤以外に未だ有効な治療法は無く、多剤耐性化が加わって治療に難渋する。申請者は、抗緑膿菌ワクチン・抗体療法の開発に取り組む中で、一部高齢者の血液中のガンマグロブリンには、緑膿菌毒素分泌システムを阻害できる抗体分画が多く含まれていることを発見した。このことは、血漿からのガンマグロブリン精製過程において、献血者年齢や測定抗体価等を指標にして分別精製することで、緑膿菌感染に対する高力価グロブリン製剤開発が可能であることを示唆している。そこで、緑膿菌抗原に対する血清抗体価について大規模疫学調査を実施し、血液供与者年齢や血液抗体価での分別精製を行ってきた。次に、ガンマグロブリン製剤を試作し、その抗緑膿菌作用について動物緑膿菌性肺炎モデルにて検証し、緑膿菌肺炎治療に有効な特殊ガンマグロブリン製剤の開発につなげる予定である。細菌感染に有効なモノクローナル抗体医薬品は、最近認可を受けたクロストリジウム毒素に対するものを除いて未だ無い。加えて、緑膿菌に対するワクチン療法開発は、依然困難な道途中にある。抗菌剤だけに頼らない新しい細菌感染に対する予防・治療法の開発は人類に取って喫緊の課題であり、本研究を通じて新たな予防法・治療法の導入をめざす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、抗緑膿菌抗体価体の疫学調査として、500人程度のヒトを対象とし、少量の供与血液を得て、抗緑膿菌抗体価の測定等を行ってきた。これまでの研究により、1) 一部の高齢者を中心とするヒト血清中には高い抗PcrV抗体が含まれており、それらの血清より抽出したガンマグロブリンには抗緑膿菌Ⅲ型分泌毒性に対する阻害作用が認められること、受動免疫投与により抗緑膿菌Ⅲ型分泌毒性作用を発揮できることなどが示されている。続いて、現在は、更に多くの血漿サンプルよりガンマグロブリン分画を抽出し、抽出したガンマグロブリンをマウス緑膿菌肺感染モデルにおいて、受動免疫もしくはIVIGでの治療効果を判定するプロセスにある。結果に応じて実際の献血由来の原資血漿の効率的な分別法を見出して臨床応用につなげる。
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今後の研究の推進方策 |
抗破傷風や抗B型肝炎ウイルス等の数少ない特殊ガンマグロブリン製剤の精製には、選定された特定の血液ドナーに対する事前のワクチン投与と、供与血液からのグロブリン分画の抽出が必要である。本邦では日本赤十字社による既存の献血システムによる血液供与由来の血漿成分を原資として、各製薬会社がグロブリン分画を抽出して非特異的ガンマグロブリン製剤を生産している。抗PcrV抗体価に関する我々の小規模疫学調査において、測定抗体価には個体により10倍以上の開きがあり、高齢者に高い傾向が認められた。加えて、国内ガンマグロブリン製剤が海外製よりも抗PcrV抗体価が高い傾向にあった。その理由としておそらく日本の幅広い年齢層と低いリピーター献血率を保つ献血システムに由来している可能性がある。超高齢化社会を迎える本邦においても、今後、益々少子高齢化の中で健康な高齢者からも献血が期待されるなかで、年齢、あるいは事前の特定の抗体価測定による原資血漿製剤の選別だけを行うことだけで、特定の病原体、もしくは特定の範囲内に含まれる病原体に対する高力価のガンマグロブリン製剤の精製が可能である可能性を秘めており、この仮説を検証していく。
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