研究課題
全世界で敗血症の罹患率は増え続けている。ゆえに、敗血症治療の確立は急務である。2016年、敗血症の定義が「感染症が疑われ、生命を脅かす臓器障害」と改定された。この改定には、Damage-Associated Molecular Patterns (DAMPs)の重要性が示唆される。DAMPsとは臓器障害の細胞から放出され、必ず個体死へと導く分子である。最近、細胞中の核内タンパク質・ヒストンが新規DAMPsと示された。なぜなら、ヒストンH3、H4が細胞傷害、血小板凝集を惹起するからである。しかしながら、他のヒストンである、ヒストンH2A、H2BがDAMPsとして証明されていない。すなわち、全てのヒストンのDAMPsとしての機能は完全に解明されていない。研究代表者らはヒストンH2A、H2BのTNFα産生能を見出し、そして敗血症の患者血清よりヒストンH2A、H2Bを検出した。よって本研究は、ヒストンH2A、H2Bの①放出経路と機能解明、②阻害剤の探索と封じ込め、③4種類のヒストンの病態進展における相互作用(関係性)を調べる。DAMPs・ヒストンの解明により、新規・敗血症治療の開発の研究基盤を確立する。本年度は①の解析を行った。その結果、エンドトキシン刺激のRAW264.7細胞において、ヒストンH2Aのみが放出されていた。興味深いことにH2Bは放出されていなかった。今後この解析を進める予定である。
3: やや遅れている
当初、ELISAを確立する予定であり、ELISAの構築を行っていた。しかしながら、ヒストンはヒトからウサギまでアミノ酸配列がほぼ同じである。したがって、抗体の作製を断念せざるを得なかった。よって、進捗状況はやや遅れている。
今年度、放出経路に関して、予想外の結果となった。そのためヒストンH2A,H2Bの放出経路を確立するために、ゲノム編集などを用いてヒストン遺伝子の3’側にタグ(HA,Hisなど)遺伝子をノックインし、再度放出経路を確認する。さらに、ヒストンの放出抑制と機能阻害について検討を行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
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