研究課題/領域番号 |
18H02914
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
飯原 弘二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 病院長 (90270727)
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研究分担者 |
東 尚弘 国立研究開発法人国立がん研究センター, がん対策情報センター, 部長 (10402851)
森脇 健介 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 准教授 (10514862)
野原 康伸 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 特任准教授 (30624829)
坂本 哲也 帝京大学, 医学部, 教授 (40365979)
中島 直樹 九州大学, 大学病院, 教授 (60325529)
西村 邦宏 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (70397834)
嘉田 晃子 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター), その他部局等, 室長 (70399608)
康 東天 九州大学, 医学研究院, 教授 (80214716)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脳卒中 |
研究実績の概要 |
脳卒中に対する標準的医療の実施を推奨するClose The Gap-Stroke (CTGS)プロジェクトを開始し、既存のDPC情報(診療報酬の包括評価制度)を活用し、必要な重要情報のみを付加し、プロセス指標の革新的な収集手法を確立し、すでにその実現可能性を報告している(Ren et al . Circ J 2021)。 2013~2017年度に脳梗塞に対する急性期再開通療法を実施した21,651症例を対象とし、脳卒中に関する医療の質に関する25項目を計測し、その遵守率の推移や医療の質と臨床転帰との関連を評価した。臨床転帰との関連を評価し得た20項目のうち、14項目は、院内死亡率の低下(Odds[95%CI]、来院からrt-PA静注療法の開始時間 <60分、0.80 [0.69-0.93]、来院から血栓回収療法の開始時間 <90分、0.80 [0.67-0.96]、有効再建術の達成、0.40 [0.34-0.48])に関連しており、また11項目は退院時の機能的自立の増加に関連していることが明らかとなった。本研究で策定した医療の質が、エビデンスに基づくものであることを示すことができた(Ren et al . Stroke 2022)。 急性期脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収療法は複数のランダム化比較試験により、内科的治療に優る転帰改善効果が示され、標準的治療として確立された。本邦においては2015年に急性期脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収療法のためのガイドラインが策定された。2015年前後で医療の質の指標の遵守率の差分の差を評価したところ、来院から血栓回収療法を開始するまでの時間の短縮や有効再開通の達成など、主に血栓回収療法に関する項目で持続的かつ顕著な遵守の向上が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国立循環器病研究センター内のデータベース(4,906患者[9,826入院])から、放射線レポートや退院サマリーに含まれるテキストデータに自然言語処理(NLP)を介して、脳梗塞の重症度(NIHSS)、脳梗塞の病型(TOAST分類)や頭蓋内血管の狭窄/閉塞等の説明変数を抽出した。DPCで収集する診療情報(患者背景、既往歴、入院中の治療、退院処方など)105項目にNLPによる説明変数を追加し、脳梗塞発症後1・3・5年以内の脳梗塞再発予測モデルをLight GBMを用いて構築した。1年以内の再発を予測する精度は、DPC単独(0.60±0.07)に比べ、NIHSS 11項目の追加(0.65±0.06)、NIHSS及びNLP 70項目の追加(0.67±0.07)により向上した。SHAP Valueを用いてNLP 70項目を評価し、脳梗塞の病型、頭蓋内血管の狭窄、深部白質病変、陳旧性脳梗塞、自覚症状に関わる20項目に絞っても十分な予測精度を有していた。(1/3/5年の再発:0.66/0.65/0.61)
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今後の研究の推進方策 |
地域包括ケア支援サービスには、パソコンやタブレット端末、スマートフォンを使って、在宅ケアに必要な介護情報や生活情報を、要介護者等の同意に基づき、在宅ケアの関係者間(医療機関、介護事業所、薬局)限定で共有できるサービスが提供されており、双方向性の情報共有が可能となっている。 同クラウドサービスをカスタマイズし、患者及び患者家族、急性期病院及び回復期、維持期を担う施設間で適切な情報共有を可能としたプラットフォームを形成した。またクラウドサービスに連携した患者主導の疾患管理ツールの開発を行った。本研究の対象である脳卒中及び心不全患者が、同一アプリ上で日々の血圧や体重、服薬管理、及び患者報告型ADLの評価を行うことが可能となった。 国際標準のQOL評価法を既に開発し、国内21施設から、虚血性脳卒中(228例)、くも膜下出血患者(86例)を対象とした、退院後の患者報告アウトカムを収集し、Unmet Needsのスクリーニングを行った。前述の機械学習による脳梗塞再発予測モデルを発展させ、急性期医療情報から退院後の患者QOLの低下、Unmet Needsを予測するモデルを構築が可能となれば、脳卒中患者の急性期後の至適な疾患管理を提案が可能となる。
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