研究実績の概要 |
本研究の目的は、老化制御因子Sirt6とPAI-1のシグナルカスケードに着目し、両者の制御機構を明らかにすると共に、運動器の退行性変化、具体的には加齢に伴う骨密度低下、軟骨変性、骨格筋減少の背景に存在する分子メカニズム、およびその治療法を明らかとすることである。骨細胞特異的にcreリコンビナーゼを発現するDmp1creマウスとSirt6floxedマウスを交配しDmp1cre::Sirt6f/fマウス(cKO)を得た。我々は前年度までに、cKOマウスはSOSTの発現亢進に伴い低回転型骨粗鬆症を呈すること、FGF23発現亢進に伴い血中リン濃度が低下することを見出した。同時にcKOでは老化遺伝子PAI-1の発現が増加することから、cKOマウスとPAI-1KOマウスを交配してDmp1cre::Sirt6f/f;;PAI-1-/-マウス(cPKOマウス)を作出し、骨組織、リン代謝を解析した。その結果、cPKOマウスではリン濃度、骨量はともにほぼコントロールマウスと同等に回復した。MLO-Y4を用いてSIRT6によるFGF23の発現制御機構を解析したところ、FGF23プロモーター領域におけるHIF-1結合が介在していることが明らかとなった。高齢のPAI-1欠損マウスと野生型マウスを比較したところ、PAI-1欠損マウスでは加齢に伴う骨量低下、血中リン濃度低下がともに認められなかった。以上より、SIRT6欠損によりFGF23, SOSTの発現が刺激され、その機構にはPAI-1制御を介する機構、SIRT6による転写制御機構が共に存在することが明らかとなった。
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