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2019 年度 実績報告書

ヒト軟骨組織分化を制御する新規メカニズムの同定と解析

研究課題

研究課題/領域番号 18H02923
研究機関京都大学

研究代表者

妻木 範行  京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (50303938)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード軟骨細胞 / 細胞分化 / 代謝 / iPS細胞 / メタボローム
研究実績の概要

下記の3つを行った。
1)ヒトiPS細胞由来軟骨を免疫不全動物の関節軟骨欠損部に移植し、移植ヒト軟骨が分化して関節軟骨様の層構造をとることを発見した。この軟骨分化・リモデリングの機序を来年度以降に解析する。
2)ヒトiPS細胞由来軟骨は培養において合体する過程が観察でき、移植軟骨とホスト軟骨の癒合のモデルになり得る。この合体過程を解析し、軟骨周膜に由来するFGFシグナルが合体を制御していることを明らかにした。以上の成果をChen, X., et al.: Tissue Eng Part A 25(5-6), p. 437-445, 2019.に報告した。
3)Sik3 KOマウスから軟骨を採取してメタボローム解析を行った結果、アセチルCoAが有意に低濃度であった。胎仔の前肢中足骨軟骨原基においてリン酸化ピルビン酸脱水素酵素 (Pdh) (p-Pdh)およびピルビン酸脱水素酵素リン酸化酵素 (Pdk)の発現がSik3 KOマウスで高かった。ワイルドタイプ(WT)マウス胎仔の前肢中足骨軟骨原基の器官培養にPdh阻害剤(CPI613)を投与したところ軟骨細胞の肥大化と軟骨の石灰化が阻害された。また、電子伝達系阻害剤(ロテノン)をWTマウス胎仔の前肢中足骨軟骨原基の器官培養に投与したところ軟骨細胞の肥大化と軟骨の石灰化が阻害され、CPI613投与時と同様の変化を示した。以上の結果はSik3 KOマウス軟骨においてアセチルCoAの減少が、軟骨成熟遅延の産物でなく原因であることを示唆する。そして、TCA回路の基質としてのアセチルCoAの減少が、電子伝達系の働きを低下させて軟骨細胞成熟を抑制することが示唆された。以上の成果をKosai, A., et al.: Biochem Biophys Res Commun 516(4), p. 1097-1102, 2019.に報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究の全体構想は、ヒトの運動器骨格が形成・維持される機序を分子レベルで解明することである。骨格を器官/組織としてとらえ、その制御機構を培養細胞のレベルではなく、生体の器官/組織の環境で理解することをめざす。生体の器官/組織を使った分子レベルの実験は遺伝子改変マウスモデルで行われてきたが、その知見がヒトに当てはまらないことが多々ある。ヒト器官/組織でのバイオロジーを知るためには、その構造と機能を誠実に再現するモデルをヒト細胞を使って作り、調べる必要がある。iPS細胞が開発されて以来、細胞リプログラミング技術を使うことで、誠実なヒト組織モデルを作ることが可能なことが示されつつある。このような目的の中で2019年度は、ヒトiPS細胞由来軟骨の合体過程を解析し、代謝による軟骨細胞分化の制御を解析した。それぞれ論文に報告した。よっておおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

全体構想は、ヒトの運動器骨格が形成・維持される機序を分子レベルで解明することを目指すため、ヒト細胞とマウスなどの動物の実験系、およびxenograftモデル実験の結果を比較し、知見を得ることを目指す。そのために、ヒトiPS細胞由来軟骨を免疫不全動物の種々の組織に移植して、in vivoにおけるふるまいを解析することを行う。2019年度までに皮下に移植した結果を解析したが、今後は骨欠損部や椎間板髄核摘出部に移植し、ヒトiPS細胞由来軟骨が移植する場所の環境によって、どのような影響を受けて分化・リモデリングするかを解析していく。また、引き続き、軟骨細胞分化の分子機序を解明するために、網羅的な遺伝子探索と、候補遺伝子のノックアウトおよびノックダウンによってヒト細胞とマウス個体での変化を解析し、目的を達成することを目指す。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] Changes in acetyl-CoA mediate Sik3-induced maturation of chondrocytes in endochondral bone formation2019

    • 著者名/発表者名
      Azuma Kosai, Nanao Horike, Yoshiaki Takei, Akihiro Yamashita, Kaori Fujita, Takashi Kamatani, Noriyuki Tsumaki
    • 雑誌名

      Biochemical and Biophysical Research Communications

      巻: 516 ページ: 1097-1102

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.bbrc.2019.06.139

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 関節軟骨変性に対する治療方法の開発:iPS細胞由来軟骨による再生とSIK3阻害剤による創薬2019

    • 著者名/発表者名
      妻木範行
    • 学会等名
      第92回日本整形外科学会学術総会
  • [学会発表] Application of iPS cell-derived cartilage to treatment of articular cartilage damage2019

    • 著者名/発表者名
      Noriyuki Tsumaki
    • 学会等名
      Global Bio Conference2019
    • 国際学会
  • [学会発表] 軟骨リプログラミング技術と軟骨疾患治療方法の開発2019

    • 著者名/発表者名
      妻木範行
    • 学会等名
      産業医科大学医学部 大学院講義
    • 招待講演
  • [学会発表] iPS細胞技術を用いた関節軟骨疾患の新しい治療方法開発2019

    • 著者名/発表者名
      妻木範行
    • 学会等名
      大阪府臨床麻酔科医会
    • 招待講演
  • [学会発表] Application of iPS cell-derived cartilage to regenerate articular cartilage damage2019

    • 著者名/発表者名
      Noriyuki Tsumaki
    • 学会等名
      2019 Zhangjiang International Summit on Cell Therapy
  • [学会発表] ヒトiPS細胞由来軟骨を用いた骨欠損治療2019

    • 著者名/発表者名
      飯森由紀、妻木範行
    • 学会等名
      第4回Skeletal Science Retreat
  • [学会発表] 内軟骨性骨化におけるYes-associated protein (Yap)の役割の解明2019

    • 著者名/発表者名
      尾崎友則、妻木範行
    • 学会等名
      第4回Skeletal Science Retreat
  • [学会発表] 椎間板変性の治療方法の開発2019

    • 著者名/発表者名
      釜谷崇志、妻木範行
    • 学会等名
      第4回Skeletal Science Retreat
  • [学会発表] FGFR3軟骨形成異常症の疾患iPS細胞モデルと創薬研究2019

    • 著者名/発表者名
      妻木範行
    • 学会等名
      30回日本小児整形外科学会学術集会
  • [学会発表] 抗老化因子Δ133p53による軟骨細胞への分化誘導と増殖の分子機構解明とその応用2019

    • 著者名/発表者名
      藤田香里、妻木範行
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] ヒトiPS細胞由来軟骨を用いた骨欠損治療2019

    • 著者名/発表者名
      飯森由紀、妻木範行
    • 学会等名
      第10回 Orthopedic Research Club
  • [学会発表] ヒトiPS細胞由来軟骨移植後の関節軟骨様層構造形成の機序解明2019

    • 著者名/発表者名
      武井義明、妻木範行
    • 学会等名
      第10回 Orthopedic Research Club
  • [図書] THE BONE Vol.33 No.12019

    • 著者名/発表者名
      妻木範行
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      メディカルレビュー社
  • [図書] 日本整形外科学会雑誌第93巻第12号2019

    • 著者名/発表者名
      妻木範行
    • 総ページ数
      8
    • 出版者
      公益社団法人日本整形外科学会
  • [図書] 臨床整形外科Vol.54 No.102019

    • 著者名/発表者名
      妻木範行
    • 総ページ数
      4
    • 出版者
      医学書院

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公開日: 2021-01-27  

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