研究実績の概要 |
下記の3つを行った。 1)ヒトiPS細胞由来軟骨を免疫不全動物の関節軟骨欠損部に移植し、移植ヒト軟骨が分化して関節軟骨様の層構造をとることを発見した。この軟骨分化・リモデリングの機序を来年度以降に解析する。 2)ヒトiPS細胞由来軟骨は培養において合体する過程が観察でき、移植軟骨とホスト軟骨の癒合のモデルになり得る。この合体過程を解析し、軟骨周膜に由来するFGFシグナルが合体を制御していることを明らかにした。以上の成果をChen, X., et al.: Tissue Eng Part A 25(5-6), p. 437-445, 2019.に報告した。 3)Sik3 KOマウスから軟骨を採取してメタボローム解析を行った結果、アセチルCoAが有意に低濃度であった。胎仔の前肢中足骨軟骨原基においてリン酸化ピルビン酸脱水素酵素 (Pdh) (p-Pdh)およびピルビン酸脱水素酵素リン酸化酵素 (Pdk)の発現がSik3 KOマウスで高かった。ワイルドタイプ(WT)マウス胎仔の前肢中足骨軟骨原基の器官培養にPdh阻害剤(CPI613)を投与したところ軟骨細胞の肥大化と軟骨の石灰化が阻害された。また、電子伝達系阻害剤(ロテノン)をWTマウス胎仔の前肢中足骨軟骨原基の器官培養に投与したところ軟骨細胞の肥大化と軟骨の石灰化が阻害され、CPI613投与時と同様の変化を示した。以上の結果はSik3 KOマウス軟骨においてアセチルCoAの減少が、軟骨成熟遅延の産物でなく原因であることを示唆する。そして、TCA回路の基質としてのアセチルCoAの減少が、電子伝達系の働きを低下させて軟骨細胞成熟を抑制することが示唆された。以上の成果をKosai, A., et al.: Biochem Biophys Res Commun 516(4), p. 1097-1102, 2019.に報告した。
|