研究課題/領域番号 |
18H02927
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 秀一 京都大学, 医学研究科, 教授 (40294938)
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研究分担者 |
伊藤 宣 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70397537)
西谷 江平 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (70782407)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 変形性膝関節症 / 骨粗鬆症 / 軟骨 / 軟骨下骨 |
研究実績の概要 |
変形性関節症は、加齢に伴い関節軟骨が変性し疼痛を伴う疾患であり、病期が進行すると外科的治療が必要になることも多い。現在まで関節軟骨の変性のメカニズムについての研究は多くなされてきたが、近年の臨床研究の結果から、関節周囲の骨の脆弱性および微小骨折の発生が関節症進行に寄与する可能性が指摘されはじめている。われわれは、先行研究において関節軟骨に侵襲を加えずに軟骨下骨のみに脆弱性を加える動物モデルの作成に成功し、軟骨下骨の脆弱性が関節軟骨の変性を増悪させる可能性を示した。 新たに全身性の骨粗鬆症が軟骨下骨微小骨折による軟骨変性に与える影響を解明すべく、12週例のラットに両側卵巣切除を行い12週間待機し、全身性の骨粗鬆症モデルを作成した。このモデルに、脛骨近位端内側の軟骨下骨部位に関節面と平行に骨孔を0.5㎜のmicrodrillを用いて7カ所作成し、膝関節軟骨下骨微小骨折モデルを作製した。これらを組み合わせて、Sham群、閉経後骨粗鬆症群、及び閉経後骨粗鬆症+軟骨下骨微小骨折群を作成した。全身性骨粗鬆症の影響により閉経後骨粗鬆症+軟骨下骨微小骨折群で閉経後骨粗鬆症群に比べて変形性関節症の進行の悪化が見られるかを、マイクロCTを用いた計測と、組織染色を用いた形態学的検索で検討した。マイクロCTでは閉経後骨粗鬆症群で骨梁数減少傾向が見られ、閉経後骨粗鬆症+軟骨下骨微小骨折群ではやや骨梁肥厚が見られたが、軟骨直下の皮質骨には差は見られなかった。組織学的染色では骨粗鬆症群と閉経後骨粗鬆症+軟骨下骨微小骨折群で表層に軽度の染色性の低下があるも毛羽立ちや亀裂・欠損等は認めず、閉経後骨粗鬆症+軟骨下骨微小骨折群で変形性関節症の進行の悪化は観察されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね予定通りに進んでいるが、関連する遺伝子解析までは行えていない。また、若年ラットでは全身性骨粗鬆症並存モデルで、軟骨下骨微小骨折による変形性関節症の悪化が見られなかった。全身性骨粗鬆症の検討では今後高齢のラットでの検討が必要と考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、前述した目的を達成するために、引き続き軟骨下骨の微小骨折が軟骨の変性に影響を及ぼす遺伝子学的変化の解析を中心に行う。ラットの脛骨近位端内側の軟骨下骨部分に骨孔を開けた脛骨軟骨下骨微小骨折モデルを用いて、1)Sham群、2)軟骨下骨微小骨折群、3)既存変形性関節症モデル(内側側副靭帯切除+内側半月板切離モデル)、4)既存変形性関節症モデル+軟骨下骨微小骨折追加群の4群を作成し、網羅的遺伝子解析を施行する。具体的には関節軟骨、軟骨下骨よりRANを抽出しマイクロアレイ(GeneChip Gene 1.0/2.0 ST Array)を行うことにより、1)と2)の比較による軟骨下骨の変化によりもたらされる軟骨における遺伝子の変化を、1)と3)の比較による既存変形性関節症モデルにおける変化の相違を検討し、さらに2)、3)、4)間についての検討を行うことにより、両者の相乗効果もしくは相加効果を検討する。同時に軟骨下骨における遺伝子の変化を検討し、軟骨下骨・軟骨間の遺伝子発現のクロストークを検討する。発現型が変化した重要な変形性関節症関連遺伝子は、real-time PC Rを行いバリデーションを行う。上記で発現の変化を確認した遺伝子において、軟骨内、特に軟骨深層での発現の変化を検討するため、免疫組織染色を行う。 また6ヶ月齢程度の高齢ラットを用いて、Sham群、閉経後骨粗鬆症群、及び閉経後骨粗鬆症+軟骨下骨微小骨折群を作成し、全身性骨粗鬆症と軟骨下骨脆弱性の合併が変形性関節症進行を促すかをマイクロCT及び組織染色を用いて調査する。
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