研究課題
軟骨形成腫瘍のドライバーである変異IDH遺伝子の腫瘍形成における役割をヒトiPS細胞を用いた解析により明かにすることを目標とした。まずAAVS1遺伝子座に変異IDH1を導入し、長期間安定してドキシサイクリンにより発現を誘導できるiPS細胞を樹立した。次に細胞から中胚葉を経由した分化誘導法により間葉系間質細胞(Mesenchymal stromal cell、MSC)を誘導し(IDH1-iMSC)、変異IDH1遺伝子の発現をON/OFFする実験により、変異IDHによりSA-beta-gal陽性細胞が増加し増殖が抑制され、やがて停止した。変異IDH1を誘導することで活性酸素種(Reactive Oxygen Species、ROS)の産生が増加し、それに伴いDNA修復機構が作動し、p16遺伝子の発現が亢進することで細胞老化が誘導されるもることが判明し、変異IDHの阻害剤あるいはDNA修復機構の阻害剤により細胞老化は阻害されることから、変異IDHによってOncogene-Induced Senescence (OIS)が誘導されることを明らかした。また長期培養におけるDNAメチル化の変化を解析した結果、変異IDHを誘導することでDNAメチル化が亢進することが判明した。一方、細胞を低酸素環境で培養することで、変異IDHによる老化誘導は阻害され、細胞はOISを回避し増殖を継続した。これらの研究結果を総合的に検討すると、常酸素環境下では変異IDHによってROSが増加し、DNA修復機構が作動することでp16の発現が亢進して、細胞は細胞老化に至る。一方、軟骨性腫瘍の発生母地である骨髄内のような低酸素下ではp16が亢進しないためDNA損傷をもったまま細胞が増殖を続けることで癌化へと進むという機構を想定する結果が得られた。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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