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2019 年度 実績報告書

メカニカルストレス病の原因遺伝子の同定

研究課題

研究課題/領域番号 18H02932
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

池川 志郎  国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (30272496)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードメカニカルストレス病 / 単一遺伝子病 / 多因子遺伝病 / ゲノム解析 / 分子病態 / 大理石骨病 / 異骨性骨硬化症
研究実績の概要

メカニカルストレス病 (mechanical stress disease)とは、生体が持っている外界からの物理的なメカニカルストレスに対する受容・制御・応答のシステムの異常・破綻により発症する疾患の総称である。単一の遺伝子の異常に起因するもの(単一遺伝子性: monogenic)と、多数の遺伝子の異常の総合的な影響によるもの(多因子遺伝性: polygenic)がある。
本研究の目的は、全エキソーム解析 (Whole Exome Sequence: WES)、全ゲノム解析 (Whole Genome Sequence: WGS)などの次世代シーケンス解析を中心とする大規模ゲノム解析により、メカニカルストレス病の原因遺伝子を同定し、その分子病態を解明することである。単一遺伝子性と多因子遺伝性のヒト疾患を統合して解析する点が、本研究の特徴である。単一遺伝子性メカニカルストレス病の原因遺伝子(疾患遺伝子)、及びその変異の機能解析、遺伝子ネットワークの解析を通じて、その分子病態を解明すると共に、対応する多因子遺伝性メカニカルストレス病の原因遺伝子(疾患感受性遺伝子)とその分子病態の解明に挑む。現在、WESの解析システムを確立し、これを用いて、すでに二つのメカニカルストレス病の新規原因遺伝子(TNFRSF11A、CSF1R)を同定し、その遺伝子変異の機能解析に成功し、これらに対応する多因子遺伝性メカニカルストレス病である骨粗鬆症 (osteoporosis)のゲノム解析を開始している。また、いくつかの単一遺伝子性メカニカルストレス病で、原因遺伝子の候補遺伝子変異を同定に成功し、その遺伝子、および遺伝子変異のin vitro、in vivoでの機能解析を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

WESを中心とする大規模ゲノム解析により、代表的なメカニカルストレス病のひとつである大理石骨病 (osteopetrosis)のグループに属する骨系統疾患(遺伝性の骨関節疾患)のひとつである異骨性骨硬化症 (dysosteosclerosis)の第二、第三の原因遺伝子、TNFRSF11A(別名RANK)、CSF1Rを発見した(Guo et al. J Hum Genet 2018, Guo et al. Am J Hum Genet 2019)。TNFRSF11A、CSF1Rのいずれにおいても、両アレルの機能の喪失を起こす変異により破骨細胞の機能が低下し、異骨性骨硬化症を生じることがわかった(Guo et al. J Hum Genet 2018, Guo et al. Am J Hum Genet 2019, Xue et al. J Bone Miner Res 2019)。更に、重度のCSF1Rの機能消失は、脳の奇形と早発性の白質変性症を伴う新規の症候群になること、軽度のCSF1Rの機能消失は、骨幹端の異形成を主徴とする骨系統疾患であるPyle病となることを発見した(Guo et al. Am J Hum Genet 2019)。これらの疾患の表現型の解析を通じて、脊椎側面像で、椎体後方1/3が凹型になった汎発性扁平椎(platyspondyly)が、大理石骨病と異骨性骨硬化症の臨床的・放射線学的な鑑別点であることが明らかになった(Xue et al. J Bone Miner Res 2019)。世界で第3、4例目のTNFRSF11A遺伝子変異による異骨性骨硬化症を発見し、その分子病態は、TNFRSF11Aの機能喪失に加えて、異常なTNFRSF11Aタンパクの存在によることを明らかにした(Xue et al.投稿準備中)。

今後の研究の推進方策

これまでに発見した新規遺伝子、TNFRSF11A、CSF1Rの機能の解明、及び異骨性骨硬化症/ Pyle病の分子病態の解明を進め、メカニカルストレスによる骨量の維持の機構を明らかにする。また、異骨性骨硬化症に対応する多因子遺伝性メカニカルストレス病である骨粗鬆症(osteoporosis)の原因遺伝子(疾患感受性遺伝子)の発見とその分子病態の解明に挑む。更に、異骨性骨硬化症以外の大理石骨病グループに属する骨系統疾患の新たな原因遺伝子の発見にも挑む。これらを通じて、ひとにおけるメカニカルストレスの受容・制御・応答のシステム(メカニカルストレス・システム)を理解し、新たな医科学、骨格生物学の領域の開拓に繋げる。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 5件、 招待講演 12件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 整形外科領域のゲノム医療 -現状と今後の課題-2020

    • 著者名/発表者名
      池川志郎
    • 雑誌名

      日本整形外科学会雑誌 -別刷ー

      巻: 94 ページ: 27-31

  • [雑誌論文] Crim1C140S mutant mice reveal the importance of cysteine 140 in the internal region 1 of CRIM1 for its physiological functions.2019

    • 著者名/発表者名
      Furuichi T, Tsukamoto M, Saito M, Sato Y, Oiji N, Yagami K, Fukumura R, Gondo Y, Guo L, Ikegawa S, Yamamori Y, Tomii K.
    • 雑誌名

      Mamm Genome

      巻: 30 ページ: 329-338

    • DOI

      10.1007/s00335-019-09822-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 運動器疾患におけるゲノム研究2019

    • 著者名/発表者名
      池川志郎
    • 学会等名
      第62回 日本手外科学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 骨系統疾患のゲノム解析2019

    • 著者名/発表者名
      池川志郎
    • 学会等名
      New Insights of Molecular Genetics on Growth Disorders
    • 招待講演
  • [学会発表] ゲノム医療について2019

    • 著者名/発表者名
      池川志郎
    • 学会等名
      第46回 難病患者・障害者と家族の全道集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 病気と遺伝:これからの医学・医療を理解するための基礎知識2019

    • 著者名/発表者名
      池川志郎
    • 学会等名
      愛媛大特別講義
    • 招待講演
  • [学会発表] 骨関節疾患のゲノム解析の現状と課題2019

    • 著者名/発表者名
      池川志郎
    • 学会等名
      第46回日本股関節学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 病気と遺伝:これからの医学・医療を理解するための基礎知識2019

    • 著者名/発表者名
      池川志郎
    • 学会等名
      広島大学歯学部特別講義
    • 招待講演
  • [学会発表] ゲノム医療と整形外科2019

    • 著者名/発表者名
      池川志郎
    • 学会等名
      ロコモ対策 運動器疾患/骨・関節フォーラム
    • 招待講演
  • [学会発表] Genetic study of skeletal dysplasia2019

    • 著者名/発表者名
      池川志郎
    • 学会等名
      APSS-APPOS 2019
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Identification of Novel Disease Genes and Re-classification of Dysosteosclerosis2019

    • 著者名/発表者名
      池川志郎
    • 学会等名
      14th ISDS meeting, Oslo, Norway
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Genomic study of skeletal dysplasia in the personal genome sequence era2019

    • 著者名/発表者名
      池川志郎
    • 学会等名
      4th National Pediatric Genetics Congress
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Genomic study of Diseases in the Genome Sequencing Era2019

    • 著者名/発表者名
      池川志郎
    • 学会等名
      中国医学科学院基礎研究所セミナー
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Genomic study of Diseases in the Genome Sequencing Era2019

    • 著者名/発表者名
      池川志郎
    • 学会等名
      北京協和医学院病院骨科セミナー
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] 骨関節疾患研究チーム

    • URL

      http://www.riken.jp/lab-www/OA-team/index.html

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公開日: 2021-01-27  

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