研究課題/領域番号 |
18H02933
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
川井 章 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長 (90252965)
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研究分担者 |
近藤 格 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (30284061)
市川 仁 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, ユニット長 (30201924)
吉田 朗彦 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (80574780)
小山 理恵子 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (40327713) [辞退]
服部 恵美 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (30815006) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肉腫 / プロテオゲノミクス / バイオマーカー / 抗がん剤 / 個別化医療 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、肉腫の新しい治療法の開発に資する医療シーズとして、バイオマーカーや治療標的の候補を同定することである。そのための手法として、プロテオゲノミクスを使用する。プロテオゲノミクスでは、同一のサンプルから得られる質量分析のデータとDNA配列およびRNA発現のデータを使用する。質量分析を用いたタンパク質同定実験では、公的なデータベースに保存されているゲノムデータから、どのようなタンパク質(ペプチド)であれば、測定されたようなイオン価数と質量が得られるかを演算する。そして、実際のイオン価数と質量とマッチさせることで、解析対象とするサンプルに含まれるタンパク質(ペプチド)を同定する。この方法では、少数の症例群においてのみ認められる変異や、頻度の低い希少がんにおいてのみ存在する変異、などを含むタンパク質(ペプチド)など、質量分析に用いられる公的データベースに含まれていないものは同定できない。また、質量分析に用いられるような公的データベースには、組織・臓器からして発現しえない遺伝子・タンパク質のデータが含まれており、質量分析のデータがそれらに間違ってアサインされてしまう危険性もある。この問題を解決するために、質量分析に使用するサンプルからDNAとRNAを抽出し、それをタンパク質(ペプチド)に仮想的に翻訳し、質量分析のタンパク質同定に使用するためのソフトウェアを申請者は開発した。本研究では、そのソフトウェアを使用した解析を行った。すでにゲノム情報(DNAおよびRNAのデータ)が得られている肉腫の臨床検体(腫瘍組織)を対象とした解析を行った。肉腫の腫瘍組織およびそこから樹立した細胞株のプロテオゲノミクスのデータを得て、術後の転移再発に関わるタンパク質(ペプチド)の解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床検体に附随する情報をもとにサンプルを層別化する比較解析は従来の解析手法と同様に行っているのだが、病態に関係するタンパク質(ペプチド)を同定することが次の目標である。弱い相関を、検証実験や機能解析に向けてどこまで拾い上げるかが、次の課題である。また、腫瘍組織と細胞株の比較解析も並行して実施しており、その解析も次の課題として考えている。
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今後の研究の推進方策 |
転移再発など臨床的に重要な事象であり、原発腫瘍組織を用いて解析が可能な事象に着目し、データを層別化して行う比較解析を継続する。そのような解析で同定されるタンパク質(ペプチド)の臨床的な有用性を確立することが最終目的である。また、患者臨床検体から樹立される細胞株は前臨床試験のツールとして有用であるものの、元腫瘍との相違が予てから報告されていることから、本研究においてプロテオゲノミクスのレベルでの差異を明らかにし、モデル系の有用性と限界を明らかにする。
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