研究課題/領域番号 |
18H02935
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
篠原 美都 京都大学, 医学研究科, 助教 (10372591)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 生殖 / 不妊 / 精子 |
研究実績の概要 |
精子幹細胞は精子形成の源であり、男性不妊症治療の新たなターゲットとして注目されている。精子幹細胞は無限に増殖し、研究代表者らが確立したマウス長期培養系(Germline stem; GS細胞)では、2年以上培養した後も培養細胞を精巣内に移植すると精子へと分化し、正常な子孫を作った。この培養技術をヒトには展開することができれば、新しい不妊治療法となる可能性が高い。本年度の研究ではヒト精子幹細胞のin vivoアッセイ系の確立のため、ヒト精巣の支持細胞であるセルトリ細胞をマウスの精巣環境へ移植し、精子分化の誘導を試みた。ヌードマウスにBusulfan を投与したのち、Cadmium を投与し、内因性精子形成およびセルトリ細胞を除去した。2-3週間後にヒト精巣凍結サンプル(米国ピッツバーグ大学より提供)を酵素処理にて細胞を遊離し、ホストマウス精細管内に移植した。また、ヒト精巣凍結サンプルを用いてヒト精子幹細胞マーカーの同定を試みた。通常細胞の遊離の用いられているトリプシンは多くの表面抗原を破壊するため、酵素処理が無い方法(cell dissociation bufferなど)や他の酵素(dispaseなど)を用いて表面抗原を保つことができる条件を検討した。Cell dissociation bufferのみにて細胞を遊離することは困難であり、Collagenase処理と組み合わせた方法にて遊離できることが分かった。これによりヒト精巣凍結サンプルを遊離し候補抗原についてフローサイトメトリーにてスクリーニングを行った。また、ヒト精巣凍結サンプルを用いて免疫染色を行った。フローサイトメトリーでは精原細胞に発現する分子を検出できなかったが、免疫染色にて数個の候補分子が認められた。また、ヒトGS細胞の培養法を確立するため、培養条件の改善を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト精子幹細胞のin vivoアッセイ系の確立については、ヒト精巣の支持細胞であるセルトリ細胞をマウスの精巣環境へ移植し、精子分化の誘導を試みた。ヒト精子幹細胞マーカーの同定についても、ヒト凍結精巣サンプルからの細胞の遊離法を確定し、スクリーニングによって候補分子を同定しつつあり、概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究では、ヒト精子幹細胞のin vitroアッセイ系の開発を目指す。マウス精子幹細胞はセルトリ細胞上へ播種するとセルトリ細胞の下へと潜り込み、敷石状コロニーを形成する。また、そのコロニー形成活性は移植によって得られた幹細胞活性と相関することを研究代表者らは報告している。本研究ではマウスやそれ以外の動物のセルトリ細胞と、ヒト精子幹細胞を含む細胞集団を共培養することで、in vitroアッセイ系を確立することを目指す。また、昨年度候補として挙げられたヒト精子幹細胞の表面抗原と、さらにスクリーニングにより候補分子を絞り込み、精子幹細胞マーカー分子の同定を目指す。それを用いてMagnetic sortingにより精子幹細胞の濃縮を試みる。濃縮されたヒト精子幹細胞集団のRNAシークエンスおよびsingle cell解析を行い、増殖関与分子や表面抗原についての情報を解析する。RNAシークエンスの解析結果を踏まえ、霊長類精子幹細胞の生存を促す小分子化合物を、96穴プレートを用いた自動スクリーニングにて調べる。Selleck chemical、calbiochemもしくはPrestwick社由来のケミカルライブラリーを利用する。また、昨年度に得られたマイクロアレイ法にてDBA/2 とC57BL/6の間の遺伝子発現比較のデータも参考に、未知の増殖シグナルを検索する。昨年度から行なっているヒト精子幹細胞のin vivoアッセイ系の確立のため、ヒト精巣細胞を精巣へ移植したホストマウスについて、精子分化の誘導の有無を調べる。
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