研究実績の概要 |
精子形成の源である精子幹細胞は無限に増殖し、一生に渡って精子を産生する。抗がん剤によって引き起こされる男性不妊症への対策として、治療に先立って精子幹細胞を採取し試験管内にて増幅し、自家移植により精子形成を復活できる可能性がある。本年度の研究ではヒト精子幹細胞の試験管内培養を試みた。ヒト精巣組織を酵素処理にて細胞を遊離し、精子幹細胞の自己複製因子であるGDNF およびFGF2 を含有する無血清培地にて培養を行った。小分子化合物ライブラリーなどを用いて精原細胞の分裂を促す化合物を検索し培地の改変を行ったところ、持続的な分裂が観察された。しかしながらその分裂速度は2週間に一回程度と遅いため、GDNFのファミリー分子であるARTN、NRTN, PSPNなどの分子やFGFファミリー分子、精原細胞の生存に関わるとされるBone morphogenetic protein (BMP)ファミリー分子などのサイトカインのスクリーニングを行った。GFRA3のリガンドであるARTNを加えた培地にて2ヶ月以上培養を継続することが可能となった。培養細胞が精子幹細胞の機能的活性を有しているかを調べるためには、ヌードマウスの精巣へ移植する必要がある。そこでVenusやEGFPなどの遺伝子導入によるマーキングをレンチウイルスにより試みたが困難であった。Adeno-associated virus, Adenovirus, Sendai-virusなどにて試みたところ、Sendai-virusにより効率よく感染・外来遺伝子発現ができたため、アルキル化剤Busulfanを投与して内因性精子形成を除去したヌードマウスの精細管内に移植を行った。
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