研究課題/領域番号 |
18H02937
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
那須 保友 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (20237572)
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研究分担者 |
定平 卓也 岡山大学, 大学病院, 助教 (20733322)
渡邉 豊彦 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (30432644)
植木 英雄 岡山大学, 医学部, 技術専門職員 (90537218)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 免疫原性 / CD147 / サイトカイン / 融合タンパク質 / 癌抗原 |
研究実績の概要 |
本研究は、癌細胞表面に強く発現する癌抗原CD147を標的とする抗癌免疫活性化治療薬としてのCD147-融合タンパク質群を用いて、抗原提示細胞分化の際のどのような細胞内シグナルが癌抗原クロスプレゼンテーション機構に関与するかを明らかにするものである。これまでの研究成果を踏まえて、泌尿器科領域における癌ワクチン効果を期待した癌治療薬の開発の観点から、CD147タンパク質を各部位に分割したCD147の各部分領域についての免疫原性解析のための基盤的研究を実施した。我々はさらに、C57BL/6マウスの大腸腫瘍由来の癌細胞株MC38を用いた免疫応答性のマウス皮下腫瘍モデルの作成を試み、既に免疫学的実験に使用できることを確認している。当該マウスモデルに使用するために、CD147タンパク質の各部位を独自に選定、挿入したサイトカイン融合タンパク質群のいくつかを新たに作成した。今後、癌抗原CD147に対する抗腫瘍効果における免疫原性が、CD147タンパク質のどの領域に存在するのかを明らかにし、当該融合タンパク質を癌治療薬候補として最適化する方針である。また、局所における抗癌免疫活性化の最適化の観点から、内視鏡下に病巣組織に薬剤を投与する独自のin vivo動物実験系の確立に関する研究を推進した。今後、局所における抗癌免疫解析において当該実験系を応用する方針である。一方で、癌局所治療薬による治療最適化を目指した薬剤投与法に関して、管腔臓器の粘膜表面における人工的な抗原抗体反応に基づく新しい癌標的治療法の可能性について検証を行うに足る基盤を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は担癌マウスモデル治療実験を継続し、CD147-サイトカイン融合タンパク質の治療有効性に基づくCD147癌抗原提示能獲得の機序についての解析基盤を確立しつつある。また、抗癌免疫の主体となる抗原提示細胞の分化過程で、どのように癌抗原提示能が確立されていくのか、その分子機構を解明する研究を継続している。一方で創薬的観点から、癌抗原CD147に対する抗癌免疫活性化治療薬としてのCD147-サイトカイン融合タンパク質を用いた担癌マウスモデル治療実験を行った。比較的免疫原性が高いと考えられるマウス由来のメラノーマ細胞株および比較的免疫原性が低いと考えられる前立腺癌細胞株等においてCD147融合タンパク質を用いた担癌マウス治療実験を実施し、抗腫瘍効果を確認した。癌抗原提示細胞におけるCD147癌抗原提示能および生体内での当該抗癌免疫活性がどのように増強・修飾されるかを解析することを主目的とする本研究は、おおむね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
抗癌免疫の主体となる抗原提示細胞の分化過程で、どのように癌抗原提示能が確立されていくのか、その分子機構を解明するべくこれまでに引き続き、癌抗原CD147に対する抗癌免疫活性化治療薬としてのCD147-サイトカイン融合タンパク質を用いた担癌マウスモデル治療実験を行う。本年度までに、比較的免疫原性が高いと考えられるマウス由来のメラノーマ細胞株および比較的免疫原性が低いと考えられる前立腺癌細胞株等においてCD147融合タンパク質を用いた担癌マウス治療実験を実施し、抗腫瘍効果を確認した。我々は以前よりC57BL/6マウスの大腸腫瘍由来の癌細胞株MC38を用いた免疫応答性のマウス皮下腫瘍モデルの作成を試み、既に免疫学的実験に使用できることを確認している。今後は、このチェックポイント阻害剤に対する反応を評価するためにも用いられてきた癌細胞株MC38による免疫応答性のマウス皮下腫瘍モデルを用いた研究を引き続き実施する。これまでの研究により、CD147タンパク質の各部位を独自に選定、挿入したサイトカイン融合タンパク質の遺伝子発現コンストラクト群を既に作成している。これらの実験系を用いることにより、癌抗原CD147に基づく抗腫瘍効果における免疫原性が、CD147タンパク質のどの部位に存在するのかを明らかにするための研究を更に実施する。さらに本年度に引き続き、当該治療マウス群において各種免疫学的指標の動態を解析し、治療効果のサロゲートマーカー同定につなげる。一方で、本研究を遂行するにあたり我々は、管腔臓器の粘膜表面における人工的な抗原抗体反応に基づく新しい癌標的治療法の可能性を見出しており、来年度も引き続き当該研究を実施する。
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