妊娠高血圧腎症(PE: Preeclampsia)は、遺伝・環境因子が複雑に関与する多因子疾患であるが、いまだ明確な原因は不明である 。我が国においては、本疾患に関連する大規模なゲノムワイド関連解析 (GWAS: Genome Wide Association Study) の報告はなく、遺伝的要因の究明が求められている。本研究は、東北メディカル・メガバンク機構が推進する世界的にもユニークな大規模出生三世代コホートの検体を用い、日本人の ゲノム解析に最適化されたジャポニカアレイによる、妊産婦(母)・父・児のゲノムワイド関連解析を行う。具体的には、これまで報告された疾患感受性遺伝子変異の日本人PEにおける妥当性の検証を行い、さらに新規のゲノム変異の探索を行う。加えて 、これらのゲノム変異情報に、疾患に有意に関連する疫学的要因等を加えることで、超高次元疾患発症予測式の構築を目指す。 2021年度は、解析対象である妊婦・夫・児のトリオ(妊娠高血圧腎症152組、対照280組)のジャポニカアレイ解析を進めた。さらに、トリオ相互作用を考慮したゲノムワイド 関連解析から、病態に関与すると推測されるゲノム変異を見出し、検証解析を進めた。加えて、トリオ家系情報を用いたより複雑なゲノムワイド関連解析を行うため、インピュテーションを含めたゲノム解析を進めている。コホート研究により収集された血漿(妊娠高血圧腎症 593例、対照509例)を用いたNMRおよびマススペクトログラフィーによるメタボローム解析を完了し、調査票情報などを用いた予測式構築を進めている。さらに、ゲノム解析情報と血漿メタボローム解析情報を投入し、遺伝環境相互作用を紐解く統合解析を進めている。
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