研究課題/領域番号 |
18H02945
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
濱西 潤三 京都大学, 医学研究科, 講師 (80378736)
|
研究分担者 |
万代 昌紀 京都大学, 医学研究科, 教授 (80283597)
安彦 郁 京都大学, 医学研究科, 助教 (20508246)
村上 隆介 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (40782363)
茶本 健司 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (50447041)
Brown John 京都大学, 医学研究科, 講師 (90583188)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 免疫ダイナミズム / 免疫ゲノミクス / 卵巣癌 / 子宮体癌 |
研究実績の概要 |
がん細胞は、発癌や進展過程において免疫細胞の攻撃から逃れており(がん免疫逃避機構)、婦人科腫瘍においてもこの免疫逃避機構を標的としたがん治療は、新たな治療戦略として注目されている。 本研究では、婦人科癌のなかでも悪性度の高い卵巣癌や子宮体癌の進展や治療経過における腫瘍局所でのがん免疫状態やがん免疫抑制機構の変化を経時的かつ統合的に解析し、新規治療に資する知見を得ることを目標としている。 これまでに、標準治療(化学療法)を行った再発症例に対して、病理組織別に(卵巣漿液性癌と明細胞癌)腫瘍組織のDNAおよびRNAを抽出し全エクソーム解析およびRNAシークエンシングを行ない、治療効果、薬剤感受性、予後(無増悪生存および全生存)などの臨床情報との関連を調べた。特に標準治療であるパクリタキセルやカルボプラチンなどの薬剤抵抗性にかかわる因子(特定の遺伝子や遺伝子シグネチャー)、長期無増悪生存している症例の因子なども同時に抽出することができ、さらに免疫(サイトカイン)シグナルやT細胞免疫、抗原提示シグネチャーなどが有意に患者の生命予後に関連していることを見出し婦人科がんにおける免疫活性状態の有用性を確認した。一方で(抗がん剤)薬剤抵抗性に関わる因子については直接的には免疫関連遺伝子と相関することはなかった。また、今後は免疫チェックポイント阻害薬を用いた患者の検体も収集しつつあり、それらを用いた解析も同時に行っていく予定である。 さらに今年度、同種同系マウス卵巣癌, 子宮体癌モデルを用いた免疫状態の変化を解析する準備を始めており、ヒトサンプルで起こっている免疫変化の検証し、さらに治療実験(併用療法)による新規治療開発の基礎的検討も行っていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、婦人科がん(卵巣癌、子宮体癌)の標準治療(化学療法)を行った再発症例に対して、病理組織別に(卵巣漿液性癌と明細胞癌)腫瘍組織のDNAおよびRNAを抽出し全エクソーム解析およびRNAシークエンシングを行ない、治療効果、薬剤感受性、予後(無増悪生存および全生存)などの臨床情報との関連を調べた。特に標準治療であるパクリタキセルやカルボプラチンなどの薬剤抵抗性にかかわる因子(特定の遺伝子や遺伝子シグネチャー)、長期無増悪生存している症例の因子なども同時に抽出することができ、さらに免疫(サイトカイン)シグナルやT細胞免疫、抗原提示シグネチャーなどが有意に患者の生命予後に関連していることを見出し婦人科がんにおける免疫活性状態の有用性を確認した。さらに抗がん剤治療前後に腫瘍組織が入手できた発現アレイデーターの解析の結果、概ね標準治療後にCD8T細胞やインターフェロンγに関連する遺伝子発現が増加しており、標準治療後に腫瘍局所で免疫環境が大きく変化することが判明した。一方で(抗がん剤)薬剤抵抗性に関わる因子については直接的には免疫関連遺伝子と相関することはなかった。 またこれまでに、治療に伴う(あるいは再発経過に伴う)免疫状態の経時的変化を探索する目的で採血検体も集積し始めており、また治療法として免疫チェックポイント阻害薬を用いた患者の検体も集積しつつあり、検体解析および検体収集ともに概ね順調な研究ペースト考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後については、腫瘍検体の解析については、すでに既存のデーターをもとに腫瘍組織における遺伝子変異量(Tumor Mutation Burden:TMB)やHLAに合わせた新規抗原(ネオアンチゲン)解析の手法も会得しており、次年度の解析をより詳細に臨床情報との相関を調べる予定である。 また、治療に伴う複数のタイムポイントでの(あるいは再発経過に伴う)免疫状態の経時的変化を探索する目的で、抗がん治療の前後で採取する末梢血単核球分画(PBMC)が集積しつつあり、これらを用いたリンパ球のレパトア解析、RNA発現解析を行う予定にしており、これまで当科で得られた知見を検証する予定である。 さらにがん治療として免疫チェックポイント阻害薬を用いた患者の検体も集積しつつあり、検体解析および検体収集ともに概ね順調な研究ペースト考えている。 また今年度後半から次年度にかけて、同種同系マウス卵巣癌, 子宮体癌モデルを用いた免疫状態の変化を解析する準備を始めており、ヒトサンプルで起こっている免疫変化の検証し、さらに治療実験(併用療法)による新規治療開発の基礎的検討も行っていく予定である。
|