研究実績の概要 |
上皮性卵巣癌の主要な組織型の中で、粘液性癌は最も予後が悪く、有効な治療法が確立されていない。その母地となる細胞および発癌分子機構は謎に包まれている。申請者は粘液性癌の組織を観察する中で、その前癌病変と思われる腺腫および境界悪性部分が常に共存していることを見出した。本研究ではこの点に着目し、同一標本内の各病変をmicrodissectionにて単離してエクソーム・シーケンスを行い、ジーンオントロジー解析を駆使して癌化に関わる遺伝子異常(driver gene)を探索する。申請者らはこれまでにヒト正常細胞にdriver geneを導入して人工的に癌細胞を作成するin vitro癌化モデルの樹立に成功している (Kyo et al. Am.J Pathol. 2003, Nakamura et al. Oncotarget in press)。本研究では、エクソーム・シーケンスであぶり出されたdriver gene候補遺伝子を卵巣表層上皮細胞または腺腫から単離した細胞に遺伝子導入して粘液性形質を有する癌化細胞の作成を目指す。癌化に導き得た導入遺伝子の種類、数、組み合わせを基に粘液性癌の発癌分子機構を解き明かすことを目的とした。
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