研究課題
上皮性卵巣癌の主要な組織型の中で、粘液性癌は最も予後が悪く、有効な治療法が確立されていない。その母地となる細胞および発癌分子機構は謎に包まれている。申請者は粘液性癌の組織を観察する中で、その前癌病変と思われる腺腫および境界悪性部分が常に共存していることを見出した。本研究ではこの点に着目し、同一標本内の各病変をmicrodissectionにて単離してシーケンスを行い、ジーンオントロジー解析を駆使して癌化に関わる遺伝子異常(driver gene)を探索する。申請者らはこれまでにヒト正常細胞にdriver geneを導入して人工的に癌細胞を作成するin vitro癌化モデルの樹立に成功している (Kyo et al. Am.J Pathol. 2003, Nakamura et al. Oncotarget 2018)。本研究では、エクソーム・シーケンスであぶり出されたdriver gene候補遺伝子を卵巣表層上皮細胞または腺腫から単離した細胞に遺伝子導入して粘液性形質を有する癌化細胞の作成を目指す。癌化に導き得た導入遺伝子の種類、数、組み合わせを基に粘液性癌の発癌分子機構を解き明かすことを目的とした。現在、粘液性癌に認められる特徴的な遺伝子変異の同定に成功しつつある。発癌実験については現在進行中であり、次年度に向けて準備を進めている。
3: やや遅れている
卵巣粘液性の良性腫瘍からの初代培養および不死化に難渋している。本腫瘍の性質と思われ、様々な条件を検討中である。
卵巣粘液性の良性腫瘍からの初代培養および不死化を成功させ、臨床検体から同定されつつあるドラーバー遺伝子候補に変異を導入し、卵巣粘液性癌のin vitro carcinogenesisモデルを作製する。
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Archives of Gynecology and Obstetrics
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