本研究では卵巣粘液性癌の発生機序を明らかにするために、粘液性癌(MC)16例、粘液性境界悪性腫瘍(MBT)10例、粘液性良性腫瘍(MA)14例の手術摘出標本を用いて遺伝子変異解析を行った。その結果、KRAS遺伝子変異がMCの44%に、MBTの20%に、MAの0%に認められた。また、BRAF遺伝子変異がMCの0%、MBTの40%、MAの0%に認められた。以上の結果からBRAF変異はMBTに特徴的な変化で、MAからの進展に関与し得ること、一方、MCへの進展には関与せず、BRAF変異を有するMBTはMCへと進展しないこと、またKRAS変異を有するMBTはMCへと進展する可能性が示唆された。
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