研究課題/領域番号 |
18H02948
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
原渕 保明 旭川医科大学, 医学部, 教授 (80208686)
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研究分担者 |
高原 幹 旭川医科大学, 医学部, 講師 (50322904)
岸部 幹 旭川医科大学, 医学部, 講師 (80447101)
熊井 琢美 旭川医科大学, 医学部, 特任講師 (00596306)
小林 博也 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90280867)
長門 利純 旭川医科大学, 医学部, 講師 (80431419)
大栗 敬幸 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (70564061)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 鼻性NK/T細胞リンパ腫 / EBウイルス / 腫瘍抗原 / 免疫抑制 / 免疫療法 |
研究実績の概要 |
2019年度は、鼻性NK/T細胞リンパ腫細胞株におけるPD-1/PD-L1以外の免疫チェックポイント分子の発現をフローサイトメトリーやウエスタンブロットどの手法を用いて調べ発現している複数の免疫抑制分子を同定した。腫瘍細胞と単球・マクロファージの相互作用の解析を、健常人もしくは患者末梢血より分離した単球・マクロファージ、もしくは単球系細胞株THP-1を本疾患細胞株と共培養し、これらの免疫抑制分子によってMDSCへの分化が誘導されるかどうかを、免疫関連分子の発現変化の経時的変化とともに解析した。また、NOD/Shi-scid.IL-2RγKO (NOG)マウス に本疾患細胞株を移植した異種移植モデルの腫瘍組織を用いて、In vivoでもMDSCなどの骨髄球由来細胞が腫瘍によって誘導されるか検討した。本疾患細胞株の培養上清中で、ELISA法を用いて複数の免疫抑制液性因子の発現を同定した。これらの因子が患者血清においても発現しているかどうかを解析中である。 上記の免疫抑制機構の解析と平行し、本疾患細胞株で発現が認められる腫瘍抗原由来エピトープペプチドの同定を行った。腫瘍特異的な翻訳後修飾(エピジェネティック修飾)であるリン酸化およびアセチル化抗原蛋白が腫瘍に発現しいていることを確認し、リン酸化およびアセチル化抗原由来のエピトープペプチドを作製した。リン酸化およびアセチル化エピトープペプチドは特異的に健常人末梢血よりペプチド特異的T細胞株を誘導することを見出した。これらのT細胞は非修飾エピトープペプチドを認識しないことから、より腫瘍特異的なT細胞を誘導可能と示唆された。今後はこれらのT細胞が実際に腫瘍を認識・殺傷可能か検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞株における免疫チェックホポイント分子の発現解析および細胞株培養上清を用いた免疫関連物質の発現解析の結果をもとに、骨髄由来細を免疫抑制系に傾かせるためのメカニズムを解析できた。今後は、これらの免疫抑制因子を阻害することで、骨髄球由来細胞を抗腫瘍免疫に偏移させられるか検討する。また、異種移植マウスモデルを用いたIn vivoにおける解析を平行して行っているとともに、臨床検体の解析準備も順調に進んでいる。さらに、新規免疫療法の開発に向けた腫瘍抗原ペプチドの検索および基礎的研究(抗原特異的T細胞の樹立)も同時に進んでいることから、当初の計画に従っておおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本疾患における免疫チェックポイント分子の発現解析および機能解析を継続して進める。具体的には、細胞株および異種移植マウスモデル腫瘍組織において発現を認めた免疫チェックポイント分子や液性因子の患者治療前生検組織および血清における発現を免疫組織化学染色やELISA法により確認する。さらに、これらの因子の発現量が治療効果や予後との関連するかを統計学的に明らかにする。またこれらの免疫チェックポイント分子や液性因子を阻害抗体などでブロックすることで、MDSCなどの免疫抑制細胞の抑制や形質転換が可能か検討する。 ペプチド免疫療法の基礎的研究に関しては、同定したアセチル化もしくはリン酸化エピトープペプチドから樹立したペプチド特異的T細胞クローンがどのHLAに拘束されるかをHLAパネルを用いて検討し、HLAが一致した腫瘍を認識および殺傷可能かをIn vitroの系(IFN-gやGranzyme BのELISA法およびCytotoxicity assay)およびIn vivoの系(T細胞移入による養子免疫療法および、ペプチドをTLRアゴニストなどのアジュバントと併用して投与するペプチドワクチン)で明らかにする。
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