研究課題/領域番号 |
18H02949
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
香取 幸夫 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20261620)
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研究分担者 |
永富 良一 東北大学, 医工学研究科, 教授 (20208028)
本藏 陽平 東北大学, 大学病院, 助教 (20810146)
池田 怜吉 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (30645742)
川瀬 哲明 東北大学, 医工学研究科, 教授 (50169728)
鈴木 淳 東北大学, 大学病院, 助教 (80735895)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 内耳 / 蝸牛 / PGC-1α / Nrf2 / 難聴 / 運動 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
内耳におけるPGC-1α/Nrf2経路の局在を検討するための基礎実験として、PGC-1αの局在およびNrf2経路の効果と作用部位の解析を行った。さらに難聴の予防におけるNrf2経路の効果が酸化ストレスからの防御にあることから、酸化ストレス防御に関与するミトコンドリアに着目し、ミトコンドリア機能異常をもつマウスの検討を研究に含めた。 ・内耳蝸牛におけるPGC-1αの局在に関しては、進捗状況の項で記すように、まだ再現性のある結果が得られていない。 ・一方、Nrf2経路の難聴予防に対する効果と作用部位については、先行研究と同様に検証を行い、騒音暴露による負荷をかけたマウス内耳においてNrf2の発現を抑えたマウスで難聴の程度が高く回復が損なわれること、さらにその障害がNrf2活性化薬である2-cyano-3,12 dioxooleana-1,9 dien-28-imidazolide (CDDO-Im)により軽減されることを確認した。過去の報告と同様に、Nrf2活性化薬が騒音負荷によって生じた酸化ストレスから蝸牛を保護していることが示唆された。その作用部位については、難聴を生じたマウスの組織像から有毛細胞および蝸牛外側壁であることが類推された。 ・ミトコンドリア機能障害が酸化ストレスの原因になることから、ミトコンドリア病モデルマウスの聴力およびその蝸牛の形態変化を検討した。ミトコンドリア病モデルマウスでは対照に比べて加齢とともに早期に難聴を呈すること、および蝸牛のラセン神経節およびラセン靭帯の下方の細胞が減少することを見出した。 これらの研究の実施に加え、日本耳鼻咽喉科学会、日本聴覚医学会、アジアオセアニア耳鼻咽喉科頭頸部外科学会に出席し、難聴を研究領域をする国内外の研究者と情報交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
内耳におけるPGC-1α/Nrf2経路の局在を明らかにするために行っているPGC-1αに関する免疫組織化学において、再現性のある結果が得られていない。この局在が明らかにならないと、これから進める研究において、運動による難聴効果が発現する内耳の部位を明らかにすることが困難である。この研究段階を試薬および組織の条件を変化させて遂行する必要がある。 PGC-1αの内耳における局在が正確に同定されていないことから、難聴に対する予防効果が期待される運動負荷の程度を、PGC-1α/Nrf2経路に関係して評価することが出来ていない。
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今後の研究の推進方策 |
・マウス内耳におけるPGC-1α/Nrf2経路の局在を免疫組織化学において明らかにする(昨年度の継続研究)。 ・マウスを複数の条件で運動負荷し、免疫組織学的にPGC-1αならびにNrf2が最も活性化される運動強度を探索する。免疫組織学的な評価が困難な場合には、他の感覚器官・神経器官に影響を与える運動強度を文献等から検索し、これを用いることを考慮する。 ・24か月間運動負荷を行うマウス群とコンロロール群の間で聴力の変動を聴性脳幹反応(ABR)で継時的に測定する。一部のマウス群には蝸牛障害を生じる騒音負荷ないしシスプラチン投与を行う。本年度から来年度にかけた主たる負荷をかけつつ動物管理を継続する。 ・マウスの加齢に伴う聴力変化がNrf2活性化剤の投与で抑制できるかどうかを、ABRおよび内耳形態(有毛細胞、ラセン神経節、血管条、ラセン靭帯)の変化により評価する。
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