研究実績の概要 |
近視による失明の病態を明らかにするため、強度近視よりも更に強い表現型である最強度近視について更に調査を進めることとし、2020年度は、(1) 最強度近視のゲノム解析、(2) 近視・強度近視・最強度近視の疫学研究、(3) 眼球形状の変化に関連する因子の解析を行った。 (1)に関しては、128例の最強度近視症例に対して全ゲノム解析を実施した結果を、京都大学附属ゲノム医学センターのパイプラインによって解析し、3,473例の健常日本人対照との比較解析を行った。この結果、最強度近視群にゲノムワイドレベルで有意に偏りが見られる変異が検出されたほか、同様にゲノムワイドレベルで有意に偏りが見られるコピー数多型も検出されている。現在、解析症例数を増加させており、今後再現性の確認を入念に実施していく。(2)に関しては、ながはまスタディにおける眼球形状のデータをまとめ、Ophthalmology誌に報告した。ここでは、通常の近視や強度近視は年代が若くなるにつれて増加するのに対して最強度近視は年代に拠らず概ね頻度が一定していることから、最強度近視は通常の近視や強度近視とは異なり、発生には環境因子よりも遺伝的因子の方が強いことを考察している。また、眼球形状パラメータの解析からは、近視進行の主原因である眼軸長の延長には眼球を正円状に大きくする因子と眼球の赤道方向への拡大を抑制する因子が相互に作用して眼軸長伸長に寄与している可能性が指摘された。(3)に関しては、約1,000眼の強度近視眼の眼球後極のカーブの経時的変化を調べることで、眼圧が一定以上高い症例はそうでない症例に比して眼球形状のカーブの変化が強いことが示され、現在論文投稿中である。
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