研究課題/領域番号 |
18H02957
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
坂本 泰二 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (10235179)
|
研究分担者 |
原 博満 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (20392079)
渡邊 睦 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (50325768)
橋口 照人 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70250917)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | vitreous body / OCT / Choroid / vessels / artificial intelligence |
研究実績の概要 |
硝子体の生物学的活動に、様々な血管構造の変化が重要である事がわかってきた。そのため、動物実験を重ねたが、動物実験では十分な評価ができないため、臨床データの収集を試みた。特に、硝子体周辺組織で最も血管が豊富な脈絡膜については解析法がないため、光干渉断層計を用いた生態観察法に注目した。その中で、血管の走向を定量化する方法を考案した。脈絡膜の深さによって血管構造をC-scanで撮影する。その像を、網膜側から強膜に向かって、順番に展開する。その深さをアノテーションしたものを教師データとして、人工知能による機械学習を行う。そこで得られたサポートベクターマシンについて、実際の症例について、脈絡膜血管層境界部を描出するソフトウェアを開発した(Sonoda S, Sakamoto T, et al. Jon J Ophthalmol 2018)。本ソフトウェアを用いて、様々な疾患(加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、緑内障、高度近視、網膜色素変性、など)を集めて、それぞれの変化を調べた。その結果、いずれの疾患においても、脈絡膜の指定層を描出できることがわかったので、その層について血管の走行を検討している。現在、それらの結果を投稿中あるいは、投稿準備中である。さらに、その解析の中で、造影剤を使わない血管解析法を考案した。これによれば、原田病の血管変化を長期にわたって評価できることが分かった。本法も論文化している(Kakiuchi N, Sonoda S, Sakamoto T et al, Ophthalmol Retina 2019, Shiihara H, Sakamoto T, et al. SciRep 2018)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例の集積は既に500症例以上を収集しており、予定以上に進んでいる。これらを使って網膜静脈閉塞症の網膜血管構造について論文報告した(Shiihara H, Sakamoto T et al. Sci Rep 2018)。同じく、レーザー眼底撮影装置の効果について、従来の方法よりも診断正答率が高いことを、専門家および研修医の間で比較して初めて報告した(Terasaki H, Sakamoto T, et al. BMC Ophthalmology 2018, Terasaki H, Sakamoto T et al, Retina in press)。 脈絡膜の構造については、現在も進行中であるが、血管構造の3次元評価法について再現性の高い方法を開発し、それらは国内企業と共同して実装化を進めた。その結果、我々が開発したソフトウェアが初めて商品化されることとなった。これは、科学研究費を使った研究の、社会への還元および産業化への成功例と言える。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年までの研究で、脈絡膜血管構造などについて、正常と糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、網膜剥離などについての情報を集めておりその構造を比較する。例えば、脈絡膜血管については光干渉断層計C-scan画像の深さを自動的に認識するソフトウェアを開発した。これは人工知能の一つである機械学習の理論を取り入れた新しいものである(特許出願中)。ここに、正常眼と疾患眼の情報を入れ込むことで、疾患眼を認識できるか否かを調べる。この問題を解決したら、問題となる特徴量を検索する。それらについて、因子増加法、因子削減法などを用いて、正常を規定する因子を特定する。この方法で抽出された因子が、正常を規定する何に影響するのかを再度考察する。この方法は、他の方法にも適応可能である。例えば、眼内のサイトカインや細胞破砕物のデータをこれらに加えることで、正常の硝子体とはどのようなものかを考えることができるはずである。本年は人工知能を用いた極めて探索的研究を行うために、実験結果に基づいて次の研究計画をたてるために、実験数などの詳細な数値は現時点では決定できないが、上記のような流れの研究は昨年成功しており、成功の可能性は決して低くはないと考える。
|