研究課題/領域番号 |
18H02963
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
吉村 浩太郎 自治医科大学, 医学部, 教授 (60210762)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 虚血性疾患 / 放射線障害 |
研究実績の概要 |
慢性化した虚血・線維化病変は全身の臓器に生じる。肝硬変、腎線維症、CLI、強皮症など多岐にわたる。その病因は、免疫原性疾患、変性(再生不良)疾患、放射線障害、代謝性疾患、血管病変など、さまざまであるが、共通してみられる病態は、阻血、線維化、組織萎縮、機能不全、治癒能(予備能)低下であり、多くは慢性炎症を伴い、進行性で、組織に本来存在する幹細胞が時間経過とともに消耗性に枯渇しているという特徴がある。皮膚軟部組織に生じた場合には、潰瘍は難治化し、外科的治療の適応とならず、治療法がないのが現状である。本研究の核心をなす学術的「問い」は、本病態は幹細胞消耗性枯渇であるか?、また、組織内在幹細胞を補填することにより病態を正常化させる治療(肥沃・賦活化治療)は可能か?、である。本治療により、病的組織の血流は良くなり、組織酸素分圧が上がり、組織や皮膚の伸展性が獲得され、組織の治癒能・予備能は回復し、正常化されるとともに、外科的な治療も可能となる、と仮説する。 皮膚・軟部組織の創傷治癒能、リモデリング能が悪い病態が存在する。その多くは、虚血(低酸素)で、線維化を伴い、慢性炎症や進行性組織萎縮を伴うこともある。先天性変性疾患や自己免疫疾患においても、こうした病態が見られ、これらは外科的な治療に難渋する。本研究では、幹細胞消耗性病態と思われるこうした様々な疾患動物モデルを作成して、その進行性病態形成のメカニズムを解明するとともに、根本的に治療するための再生医療を開発する。これまでに積み上げてきた研究成果に基づき、幹細胞消耗性病態、なかでも糖尿病足病変やASOをはじめとする重症下肢虚血(CLI)、限局性強皮症やエリテマトーデスなどの自己免疫変性疾患、放射線障害、を中心において、幹細胞ならびに幹細胞を含んだ細胞加工品による肥沃化治療の実用化に向けた基礎研究、橋渡し研究を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
疾患モデルとして、①放射線障害モデル、②糖尿病皮膚潰瘍モデルについて、急性モデルについて、その病態を検証している。皮膚皮下組織の血流、酸素飽和度、組織酸素分圧、毛髪等付属器の機能、組織硬度、など生理学的評価に加えて、解剖学的評価(厚さなど)、組織学的評価(毛細血管、毛細リンパ管、幹細胞、炎症細胞の数、線維化などの定量評価)、幹細胞生物学的評価(幹細胞を単離して、その数と機能の分析)を行う。 2)ヒト:乳がん温存療法後組織、頭頚部放治後組織、限局性強皮症、肥厚性瘢痕拘縮(ケロイド)、アトピー性皮膚炎後組織について、皮膚皮下組織の温度、蒸散水分量、血流、酸素飽和度、組織酸素分圧、組織硬度、など生理学的評価を行う、サンプルが採取できる場合には、解剖学的評価(厚さなど)、組織学的評価(毛細血管、毛細リンパ管、幹細胞、炎症細胞の数など)、幹細胞生物学的評価(幹細胞を単離して、その数と機能の分析)を行う。おおむね計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
1)移植物の開発:初歩的な脂肪移植法を対照の1つとし、幹細胞付加脂肪移植法、幹細胞移植法、血管内皮前駆細胞併用へと発展させていく。幹細胞移植法には、幹細胞スフェロイド、幹細胞と血管内皮前駆細胞の重層化混合スフェロイドなどの注入可能な細胞加工品や、バイオマテリアルマイクロビーズを核として細胞加工品を作成する。また、ナノレベルでの加工製造が可能な3Dプリンターを用いて注入可能かつ、増殖因子の徐放が可能なマイクロスキャフォードを作成し、幹細胞を搭載した、臨床でも実行が可能な四次元高機能化幹細胞コンストラクトを開発し、細胞を搭載してその有効性を検証する。 2)疾患モデル:当面は、①放射線障害モデル、②重症虚血下肢モデル、③糖尿病皮膚潰瘍モデルの3モデルについて、6か月以上症状が固定した慢性化モデルを用いる。上記の治療を行ったあと、3、6か月後に下記の有効性の評価を行う。 3)移植実験:疾患マウスにおける自家移植治療に引き続き、免疫不全動物を使ったヒト細胞治療、およびマウスにヒト幹細胞を投与する異種移植モデル(幹細胞の多くは免疫寛容であることを利用する)までを行う予定である。
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