研究課題/領域番号 |
18H02972
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
伊藤 公成 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (00332726)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 骨肉腫 / RUNX / c-Myc / p53 |
研究実績の概要 |
骨肉腫は代表的なヒト「希少がん」であり、研究者人口が少なく、解析が遅れている。そこで私たちは、骨肉腫発症の分子メカニズムの解明を目指し、ヒト骨肉腫の性状に酷似した骨肉腫を発症するモデルマウス;Osx-Cre;p53f/fマウス(骨芽細胞特異的にp53を欠損したマウス/OSマウス)を使用して、ヒトがん発症に広く関与することが知られるRunx転写因子の機能に着目して検討してきた。 これまでの解析から、骨肉腫発症の分子基盤は「p53の遺伝子異常に伴う、Runx3によるc-Mycの過剰誘導」であることが判明した。Runx3によるc-Mycの誘導に必要なゲノムDNAエレメントとして、c-Mycの転写調節領域の中からRunx結合部位mR1を特定した。さらにこのmR1を全身性にホモ変異させたマウスを作出し、OSマウスと交配させてその造腫瘍性を観察したところ、OSマウスそのものと比較して、mR1m/mOSマウスの造腫瘍性は顕著に低下した。mR1が革新的な抗骨肉腫創薬ターゲットになりうることをマウス生体レベルで確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Runx3によるc-Mycの誘導に必要なゲノムDNAエレメントとして、多角的かつ網羅的なスクリーニングを経て、長大なc-Mycの転写調節領域(約3Mb)の中からRunx結合部位mR1を特定した。そこで「mR1の改変によってOSマウスの造腫瘍性をレスキューできるか」を検証することにした。その際、mR1近傍に存在するRunx結合部位mR2およびmR3をも合わせて検証した。mR1、mR2、mR3のRunx結合配列(6bp)を全身性に制限酵素BglⅡサイトに置換したマウスを作製した。それらをOSマウスと交配して、mR1m/m OS、mR2m/m OS およびmR3m/m OSマウスを作出した。それぞれ数十匹を1年以上観察したところ、OSマウスに比べて顕著に造腫瘍性が低下したのはmR1m/m OSマウスのみであった。この結果から、mR1の特異性・有効性がマウス生体レベルで明らかになった。これらの観察結果が当初の計画(想定)よりも短い期間で得られた。
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今後の研究の推進方策 |
p53非存在下で、Runx3によるc-Mycの発現誘導に必要なゲノム上のエレメント「mR1」は、革新的な抗骨肉腫創薬ターゲットになりうることをマウス生体レベルで確認できた。今後は、このmR1を阻害することで革新的な抗骨肉腫戦略となる創薬へ進展させたいと考えている。その方向性として、① mR1そのものをDNA類縁化合物(PIポリアミド等)をデザインしてブロックするか、あるいは、② mR1上のRunx3と他の因子の機能を阻害する薬剤を同定・開発するか、2つの方法が考えられる。現在はその双方とも視野に入れ、候補化合物を入手するなどの準備を開始した。
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