研究課題/領域番号 |
18H02975
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 正寛 東北大学, 歯学研究科, 教授 (40215562)
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研究分担者 |
吉田 恭子 (今中恭子) 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (00242967)
山田 聡 東北大学, 歯学研究科, 教授 (40359849)
半田 慶介 東北大学, 歯学研究科, 講師 (40433429)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 細胞害マトリックス / メカノバイオロジー / 免疫機構 / 組織破壊 / 抗炎症療法 |
研究実績の概要 |
今年度は機械的外力が炎症に及ぼす影響を解析するために、根尖性歯周炎モデルの確立を行った。マウスの歯髄を開放する根尖部に炎症を引き起こすモデルである。当該モデルを用いて根尖部骨組織を破壊するか否かをマイクロCTにて解析を行った。その結果、歯髄解放後に2週間から根尖部の骨吸収が始まり、その後組織破壊の促進が観察された。この破壊過程を経時的に観察すると、初期にly6G陽性の好中球によりMMP-9による組織破壊が起こり、その後は慢性炎症に関わる細胞浸潤による組織破壊が起こる事が推察された。このメカニズムを解明するために、根尖性歯周炎の成立過程における経時的な遺伝子発現変化をPCRarrayで解析を行った。その結果、歯髄解放後2週間前は炎症関連遺伝子の発現上昇は見られないが、組織破壊が始まる3週間以降でIL-1betaを含む炎症性サイトカインの顕著な上昇が観察された。これら炎症性サイトカインに加えケモカインの発現が上昇することが判明した。これらサイトカインとケモカインの発現は、歯髄解放後2週感から2ヶ月まで発現上昇を続けた。この結果より歯髄から侵入した細菌が引き起こした炎症は、自然治癒すること無く慢性炎症へといこうすると考えられた。このことから根尖性歯周炎は根管からの細菌感染が免疫抑制機構を撹乱することで組織破壊を優位にする事が示唆された。また根尖部は機械的外力が加わるところであり、メカのバイオロジーの破綻も組織破壊促進に関わる可能性が示唆された。この仮説を実証するため、次年度はADAMTSL6KOマウスを用いて研究を行うことを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のメインテーマであるメカノバイオロジーの破綻で引き起こされる組織破壊を解析する根尖性歯周炎モデルの確立を行う事が出来た。またこのモデルで引き起こされる組織破壊の過程を経時的な炎症関連遺伝子の発現変化を明らかにする事が出来た。これらのデータは、メカノバイオロジーが組織破壊に関わるメカニズム解析に必須な項目である標準となるデータを取得する事ができた。現段階で本研究で得られ遺伝子変化を公表することは出来ないが、次年度から開始するADAMTSL6KOマウスで起こりうる変化の解析に必要な基礎データを取得することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で根尖性歯周炎で引き起こされる組織破壊に関わるサイトカインとケモカインを同定することが出来た。今後はメカノバイオロジー制御に関わるADAMTSL6KOマウスを用いて、本研究で見いだした根尖性歯周炎関連遺伝子の動向と根尖部歯周組織の破壊に及ぼす影響を解析する。特にメカのバイオロジーと免疫抑制系細胞との関連性を解析していくことを予定している。万が一研究が予想通りに進まない場合は、今後はこれらサイトカインとケモカインの阻害薬を動物モデルに作用する実験系を構築し、組織破壊に及ぼす影響を解析する。
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