研究課題/領域番号 |
18H02977
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
栗原 英見 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (40161765)
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研究分担者 |
加治屋 幹人 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (00633041)
池谷 真 京都大学, iPS細胞研究所, 准教授 (20442923)
水野 智仁 広島大学, 病院(歯), 講師 (60325181)
藤田 剛 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (80379883) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞集塊 / C-MSCs / 神経堤細胞由来間葉系幹細胞 / iPS細胞 / 立体複合化 |
研究実績の概要 |
これまでに研究代表者らは、間葉系幹細胞(MSCs)と細胞自身が産生した細胞外基質(ECM)を応用し、直径1mmほどの間葉系幹細胞集塊C-MSCsを樹立していた。C-MSCsは人工足場材料を用いることなく、歯周組織欠損部に直接移植可能で、組織再生を促進する。本研究ではこの集塊培養技術と、歯周組織の発生を担う神経堤細胞由来間葉系幹細胞(NCC-MSCs)を応用した、より効果的な歯周組織再生療法の開発を目的とする。 研究初年度には、成体から分離困難なNCC-MSCsをiPSs細胞から誘導する培養法の確立に着手した。その結果、ゼノフリー条件でヒトiPS細胞からNCCを経てMSCsに高効率に誘導する方法を確定させた(XF-iNCC-MSCs)。さらに、XF条件で集塊化させる方法も樹立した(XF-C-iNCC-MSCs)。またSCIDマウスの頭蓋冠欠損モデルに移植することで効果的な骨再生を誘導出来ることを明らかにした。これらの成果をまとめ論文投稿準備中である。 研究2年度には、XF-C-iNCC-MSCsと3Dバイオプリンターを組み合わせることで、cm単位の大型組織を作製する方法を確立した。さらに、XF-C-iNCC-MSCsの細胞機能を制御する培養法の検討をすすめている。また、比較対照として骨髄由来のC-MSCsをゼノフリー条件で作製する方法を確立し、その移植による骨再生効果およびそのメカニズムの解明を行い、論文発表した。 今後、この基礎研究の成果を応用し、XF-C-iNCC-MSCsと3Dバイオプリンターから作製させる大型組織移植による歯周組織再生療法開発と併行して、XF-C-iNCC-MSCsの細胞機能を向上させる培養法の改良をすすめる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ヒトiPS細胞からNCCを経て得られるMSCsをXF条件で作成し、これに研究代表者らが独自に開発した集塊培養技術を応用し、歯周組織再生に効果的な立体的組織を生体外から作製・供給する技術開発基盤研究である。 研究初年度には、当初の予想通り、XF-iNCC-MSCsを作製し、それを集塊化することで、XF-C-iNCC-MSCを得ることが出来た。さらに、SCIDマウス頭蓋冠欠損モデルを用いた移植実験によって、XF-C-iNCC-MSCsが高い骨再生能を有していることを示した。これらの成果は論文投稿準備中である。研究2年目には、3Dバイオプリンターを用いて、XF-C-iNCC-MSCsから大型組織を作製する方法を確立した。さらに、その大型化の過程で、歯周組織関連遺伝子群が段階的に向上することなどを見出しており、歯周組織再生療法に有効である可能性を認めている。また、骨分化誘導を施すことで、XF-C-iNCC-MSCsの骨再生能を向上させられることも示した。 これら一連の研究の比較対照として、骨髄由来C-MSCsをゼノフリーで作製し、それが効果的な骨再生能を有していることを示した。さらにその骨再生機序が、移植された細胞自身による骨形成と、宿主細胞による骨形成の両者が関与していることを見出し、論文発表を行った。 今後は、骨誘導を施したXF-C-iNCC-MSCsに加えて、軟骨誘導を施したものを作製し、3Dバイオプリンターで複合化することで、より高い歯周組織再生効果を発揮する立体組織の樹立を目指す。以上のことから、本研究は概ね計画通りに進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度には、細胞性質を制御した複数種類のXF-C-iNCC-MSCsを作製し、その複合化による高機能な立体組織の開発を目指す。すなわち、XF-C-iNCC-MSCsに軟骨誘導を組み合わせることで、低栄養状態に強く、軟骨内骨化による強い骨形成能を発揮する細胞集塊の樹立を行う。その後、骨誘導XF-C-iNCC-MSCsとこの軟骨誘導XF-C-iNCC-MSCsを3Dバイオプリンターによって複合化し、ヌードラット大規模歯周組織欠損モデルに移植することで、その組織再生能を評価する。さらに、その組織再生メカニズムについて移植された細胞と宿主細胞に対する多重免疫染色を行いながら検証する。 また、上記の研究過程において、細胞集塊C-MSCsは3次元的で浮遊状態という独特の培養環境にあり、MSCsの細胞分化を制御するYAP/TAZメカノトランスダクションが影響を受けていることを見出してる。そこで、この知見を応用し、骨誘導・軟骨誘導に加えて、メカノトランスダクション制御によるXF-C-iNCC-MSCsの細胞機能向上を目指す。 これらの成果について、随時論文発表を行うとともに、新規的な細胞機能制御培養法が得られた場合は特許出願もすすめる。さらに、本基盤研究の成果を臨床応用するために、産官学連携の可能性を模索していく。
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