研究課題/領域番号 |
18H02982
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北村 正博 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (10243247)
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研究分担者 |
村上 伸也 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (70239490)
山下 元三 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (90524984)
竹立 匡秀 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (60452447)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯周組織再生 / ステムセルエイジング / 歯根膜細胞 |
研究実績の概要 |
研究初年度の2018年度は、歯周組織の再生に重要である体性幹細胞亜集団を含有する歯根膜由来細胞を用いてin vitro細胞老化モデルを樹立し、そのモデルを用いて歯周組織幹細胞のステムセルエイジング機構の解析を行った。 1、ヒト初代培養歯根膜細胞に、NIH-3T3変法に基づいた継代培養を導入し、in vitroの歯根膜幹細胞老化モデルを構築した。ヒト歯根膜細胞は、継代の増加に伴って肥大した細胞形態を呈し、細胞増殖能、幹細胞マーカーの発現低下、クロマチンの異常を示した。継代数30以上の歯根膜細胞には、透過電子顕微鏡観察により、ミトコンドリアと染色体構造の異常が多数認められた。また、遺伝子レベルでは、細胞周期の調節制御に関わるP53、P16の発現増強並びに、炎症性サイトカインIL-6,IL-8などの発現増強が認められ、老化関連分泌蛋白の産生が確認された。 2、in vitro歯根膜幹細胞老化モデルにおける各継代の歯根膜細胞からmiRNAを精製し、miRNAの発現プロファイルの解析を実施した。また、同モデルで同様に継代培養した歯根膜細胞よりmRNAを精製、標識化し、マイクロアレイを用いてmRNA発現を解析した。そして、Ingenuity Pathway Analysis法を用いたトランスクリプトーム解析を行った結果、細胞周期、炎症性応答、代謝能に関係するmiRNAsの増加と標的遺伝子群の発現低下が認められた。また、老化歯根膜細胞において、miR-137の発現上昇と損傷ミトコンドリアの処理過程の遅延に関与する遺伝子群との関連性が明らかとなったことから、幹細胞のエネルギー代謝の中心となるミトコンドリア代謝の調節経路の異常が歯根膜細胞のステムセルエイジングに関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、当初の計画通りin vitro歯根膜幹細胞老化モデルを構築し、ヒト歯根膜細胞の継代の増加に伴う細胞形態の変化、細胞増殖能や幹細胞マーカーの発現低下、ミトコンドリアの異常、炎症性サイトカインの発現増強、老化関連分泌蛋白産生などの歯根膜細胞の老化の特徴を明らかにすることができた。また、in vitro歯根膜幹細胞老化モデルを用い老化歯根膜細胞におけるmiRNAと各種mRNA発現との関連性をIngenuity Pathway Analysis法により解析し、miRNAsが歯根膜細胞のステムセルエイジングに関与する可能性を明らかにできたことから、2018年度に予定していた計画を概ね計画通りに遂行できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度以降は、前年度に構築したin vitro歯根膜幹細胞老化モデルを用い、各継代数の歯根膜幹細胞miRNA発現プロファイルの解析し、各種miRNAの標的遺伝子を明らかにする。そして、歯根膜幹細胞の培養上清のプロテオーム解析を行い、歯根膜幹細胞のステムセルエイジング過程におけるmiRNAs-mRNAs-蛋白質(三次元トランスオミクス)データベースの構築を目指す。また、老化歯根膜細胞に加え、我々がすでに樹立しているヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)の初代培養細胞株についても同様のin vitro細胞老化モデルを構築し、ADSCのステムセルエイジング機構についての検討を計画している。
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