研究課題/領域番号 |
18H02984
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
原田 英光 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (70271210)
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研究分担者 |
大津 圭史 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (60509066)
横山 拓矢 岩手医科大学, 医学部, 講師 (70772094)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 象牙質再生 / 象牙質歯髄複合体 / iPSC / CPNE7 |
研究実績の概要 |
iPS細胞からCopine-7と細胞極性を制御するSemaphorin4D(Sema4D)を応用して,ヒトiPS細胞(hiPS)から象牙質・歯髄複合体形成を誘導する技術を開発する。hiPSから分化誘導した神経堤様細胞(NCLC)あるいは間葉系幹細胞(MSC)に対してリコンビナントヒトCopine-7(hCPNE7)あるいはhCPNE7発現HAT7(ラットエナメル芽細胞株)のコンディション培地を作用させる実験を行った。その結果,象牙芽細胞の分化マーカー(DSPP)の発現を免疫組織学的に確認して,象牙芽細胞への分化は誘導できた。さらにNCLCに対して転写因子Pax9を強発現させる方法で象牙芽細胞への分化誘導法方法も確立した。一方,hCPNE7発現エナメル上皮細胞株オルガノイドとNCLCオルガノイドを結合させる実験を行ったが,マウスとヒトオルガノイドは最終的には結合せずに器官発生へ誘導は成功しなかったため, iPS由来ヒト上皮細胞の作製を行い,この細胞による上皮細胞オルガノイドの作製を試みたが,象牙質・歯髄複合体の作製には至らなかった。さらにこの2つのオルガノイドとiPS由来NCLCオルガノイドを結合させた共培養を行い,iPS細胞から象牙芽細胞への分化誘導オルガノイドの作製とSCIDマウス移植による実験を行った。ここまでの実験で,一時的なあるいは局所的な象牙芽細胞への分化誘導は可能にはなったが,完全な象牙質・歯髄複合体の形成には3次元的な再生環境が必要である。2020年度の研究成果としては,歯根象牙質再生の基盤技術として,我々が樹立したヘルトビッヒ上皮鞘細胞株(HERS02T)が高い象牙芽細胞分化誘導,石灰化形成を誘導する能力に秀でていることを見出した。2021年度は,hCPNE7とHERS02Tなどを用いて象牙質・歯髄複合体形成の臨床応用に向けた検討を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の計画から,hiPSからの神経堤様細胞(NCLC)あるいは間葉系幹細胞に対してリコンビナントヒト Copine-7(h CPNE7)を作用させる実験を行った結果,効果的に象牙芽細胞の分化マーカー(DSPP, DMP, Pax9, Lhx6)の発現を誘導できている。Pax9を介したhiPSからの象牙芽細胞分化誘導も再現することができた。以上より象牙芽細胞分化誘導には基本的に成功したといえる。一方,象牙芽細胞の極性制御による歯髄組織構築は未だ実現できていない。加えてオルガノイドによる象牙質・歯髄複合体の形成は困難を極めており,新しい分化誘導と3Dの培養系の工夫がさらに必要であると考えられた。一方で,昨年度の成果として,象牙芽細胞の分化誘導にHertwig上皮鞘の細胞株が有効であることが示された。そこで,この細胞株を用いたオルガノイドや3Dの培養法を検討中である。加えて上皮もhiPS細胞由来で作製して上皮間葉の再結合による象牙質歯髄複合体の再生を次年度も目指す予定である。以上の成果により概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度では様々なRhoシグナル活性化因子を用いて象牙芽細胞の極性制御に関する実験を行い,より効果的な象牙芽細胞の配列方法を検討する。CPNE7とSema4Dの両発現ベクターを用いたhiPS由来エナメル上皮細胞の新規細胞株を作り,さらにこれらの細胞とNCLCとを組み合わせた3Dオルガノイドの形成を試みることでより精巧な象牙質―歯髄複合体形成に取り組んでいく。さらに昨年度にて高い石灰化誘導能をもつHertwig上皮鞘細胞株を用いて,NCLCとの共培養から象牙質・歯髄複合体の形成についても検討を加えていく。上記の複合体をSCIDマウスの腎被膜下に移植して生体組織中で象牙質―歯髄複合体の形成が行われるかについて検討を行う。これらの研究成果は最終的にウシやブタ,あるいは人工的に作成したアパタイトによる歯根様構造物に対してなどに対してこれらの細胞複合体を適応し,ヌードマウス,SCIDマウスの皮下にて象牙質歯髄複合体の再生が可能であるかを検証したいと考えている。
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