研究課題/領域番号 |
18H02989
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
加来 賢 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (30547542)
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研究分担者 |
佐伯 万騎男 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30273692)
魚島 勝美 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50213400)
井田 貴子 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (60790285)
泉 健次 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80242436)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯根膜 / 組織幹細胞 / 細胞系譜解析 |
研究実績の概要 |
現代の骨結合型インプラントは、予知性の高い欠損補綴の選択肢のひとつとして確立しているが、対合天然歯における過剰咬合や歯周炎の急速な進行等、歯根膜を具備しないことに起因する未解決の問題が依然として数多く残されている。したがって歯根膜再生による天然歯の保存、あるいは次世代型インプラントとして期待される歯根膜インプラントの開発は、より生体親和性の高い補綴歯科医療の提供を可能とし、本邦が目指す健康長寿の実現に大きく貢献する事が期待される。 歯と歯槽骨を連結する線維性結合組織である歯根膜は石灰化/非石灰化の相反する特徴を有する細胞群が積層した特有の多層構造を形成している。この歯根膜の多層構造を再現するためには石灰化/非石灰化に寄与するそれぞれの細胞とその分化制御因子を明らかにする必要がある。歯根膜細胞の石灰化能についての研究は比較的進んでおり、培養環境下において高度な石灰化能を示すことが知られている。また、臨床的にも外傷等によってアンキローシス(骨性癒着)が生じることから、歯根膜細胞は元来極めて石灰化し易い細胞であると考えられている。一方、歯根膜に特徴的な非石灰化領域を構成する細胞の維持に関する詳細は依然として不明であり、その解明こそが歯根膜の理解と将来的な再生を図る上で極めて重要であると考えられる。 多様な細胞が層構造を成す歯根膜の解析においては、組織レベルでの解析が不可欠であり、本研究では、細胞系譜を追跡可能なレポーターマウスを用いた組織学的解析法を用いる。また分化制御因子の同定にはプロテオミクス的手法を用いて候補物質の網羅的な解析を可能とする。本研究では、歯根膜における組織幹細胞が非石灰化領域を構成する細胞へと分化する運命経路を明らかにし、その制御因子を同定することにより、天然歯の歯根膜再生、歯根膜インプラントの開発を可能とする基盤的技術の獲得を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レポーターマウスによる歯根膜細胞の長期追跡に成功しており,現在クラスターを構成する細胞の特性解析を行って行っている.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に確立した歯根膜細胞の長期追跡法を用いて,過剰咬合,再植モデルによる細胞増殖/代謝活性の変化を解析する.申請者らは歯根膜における過剰咬合,歯の再植モデルについて多くの実績があり,これまでに確立した方法に準じて行う(J Periodontal Res. 2017, J Cell Physiol. 2016, J Periodontal Res. 2016, Anat Sci Int. 2016, J Prosthodont Res. 2014, J Periodontal Res. 2005).過剰咬合による力学的刺激,再植による創傷治癒過程の解析により,恒常性維持とその破綻からの回復過程に重要な組織幹細胞の運命経路を明らかにする. 歯根膜培養上清における分化誘導物質の同定については,毎回新たに調整した初代細胞を用いる必要性から,現状では個々の解析結果にばらつきを生じることが多い.そのために骨髄由来細胞の幹細胞能の維持に適した細胞の調整法や分化培養条件の検討を行う.既に調整した歯根膜細胞の培養上清から総タンパクを硫酸アンモニウムにて沈殿,回収し,イオン交換カラムを用いて分離,フラクションの回収を行う.得られたフラクションをマウス骨髄由来間質細胞(BMSC)に添加し,細胞増殖/分化活性を指標に活性物質の絞込みを行う.
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