研究課題
3年間の縦断研究を行い,咬合力と認知機能低下との関連を検討した.方法:対象者は,70歳ならびに80歳の自立した地域在住高齢者1204名とした.口腔内検査により,残存歯数,歯周ポケット深さ4mm以上の歯数を記録した.最大咬合力の測定にはデンタルプレスケール(ジーシー社,東京) を用いた.また, 認知機能の評価は, 日本語版Montreal Cognitive Assessment (MoCA-J) を用いた.交絡因子として,過去に認知機能との関連が報告されているほとんどの因子を調査した.MoCA-Jは,ベースライン時および追跡調査時の得点を解析に用い,その他の変数は,ベースライン時の値を用いた.統計学的分析には,目的変数をMoCA-J得点とした一般化推定方程式(GEE)を用いた.説明変数に咬合力,さらに3年間での認知機能低下との関連を検討するために,ベースライン時から追跡調査時の時間経過と咬合力との交互作用項を投入し,その他の交絡因子を調整変数として加えた.なお,有意水準は5%とした.結果と考察:MoCA-J得点を目的変数としたGEEの結果,咬合力 (非標準化係数;B=0.084, p=0.019) は,他の交絡因子を調整した上でも,認知機能に有意な関連を認めた.さらに,咬合力と経過の交互作用項 (B=0.058, p=0.031) は,認知機能に有意な関連を認めた.また,性別,年齢,教育年数,時間経過,血清CRP定量,握力,歩行速度,経済状況は,認知機能に有意な関連を認めた.本研究の結果より,咬合力は残存歯数と独立して認知機能および認知機能低下に関連していることから,歯の欠損を有する高齢者において,補綴治療による口腔機能の維持が認知機能低下の抑制に寄与していることが示唆された.
2: おおむね順調に進展している
参加者数も予定通りであり,データの整理,分析も順調である.
次年度も,今年度同様,参加者の確保,データ整理,分析を遅滞なく進める.
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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