研究課題
目的:口腔とサルコペニアとの関連が認められることが,これまでいくつか報告されている.しかしながら,口腔機能低下症の診断項目である舌圧や舌口唇運動機能などの口腔機能とサルコペニアとの関連についての報告はほとんどみられない.そこで本研究では,口腔機能とサルコペニアとの関連について検討を行うことを目的とした.方法:対象者は,70歳代80歳代の地域在住高齢者455名(男性223名,女性232名)とした.サルコペニアの判定は,Asia Working Group for Sarcopenia (AWGS)の診断基準に基づき行った.対象者は,舌圧,舌口唇運動機能,咬合力,咀嚼能率,嚥下機能において,それぞれ健常群・低下群の2群に分類された.なお,低下の判定は口腔機能低下症の診断基準に従った.口腔機能とサルコペニア罹患の関連について,これまで報告されてきた危険因子を調整したロジスティック回帰分析により検討を行った.有意水準は5%とした.結果:サルコペニアの罹患者は,109名(21.8%)であった.ロジスティック回帰分析の結果,咬合力(オッズ比1.89,95%信頼区間1.03-3.44)は,性別,年齢,残存歯数などを調整した上でもサルコペニア罹患と有意な関連を認めた.その一方で,その他の舌圧,舌口唇運動機能.咀嚼能率,嚥下機能などの口腔機能は,サルコペニア罹患と有意な関連を認めなかった.結論:地域在住高齢者において,咬合力は,サルコペニア罹患に関連することが明らかとなった.
2: おおむね順調に進展している
参加者数も予定通りであり,データの整理,分析も順調である.ただし,国際学会の中止によって,成果発表の機会が失われたのが誤算であった.
次年度も,今年度同様,参加者の確保,データ整理,分析を遅滞なく進める.ただし,新型コロナウィルス感染拡大の影響で,高齢者の調査を予定通り行えるのか,懸念している.
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
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