研究課題/領域番号 |
18H02992
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
松香 芳三 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (90243477)
|
研究分担者 |
大島 正充 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 准教授 (00548307)
山本 由弥子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (20403496)
岩田 幸一 日本大学, 歯学部, 教授 (60160115)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | グリア細胞 / 痛み / サイトカイン / 三叉神経節 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、三叉神経節内のサテライトグリア細胞と神経節細胞との相互作用により、痛み情報が増加する可能性があること、ならびにグリア細胞機能を抑制することにより、痛み情報が減少する可能性があることを探索することである。当該年度においては、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)をラット三叉神経節に直接投与し、口腔顔面侵害性疼痛発現とグリア細胞からのサイトカイン遊離の変化を観察するとともに、グリア細胞機能を抑制することによる痛み行動の変化を観察した。 CGRPをラット三叉神経節に直接投与後、口腔顔面痛評価装置を用いて熱痛覚過敏を評価したところ、投与6時間後において、顔面部への45℃の刺激により、痛み行動反応の増加が観察された。また、CGRP投与後、グリア細胞の活性上昇が観察され(GFAP発現の増加)、炎症性サイトカインIL-1β、抗炎症性サイトカインIL-1RA、ニューロンの活性化を示すNaV1.7のmRNA発現の増加が観察された。また、グリア細胞機能抑制作用のあるミノサイクリンを三叉神経節に事前に直接投与することにより、CGRPで誘発される痛み行動反応が軽減されるとともに、グリア細胞活性、IL-1βおよびIL-6のmRNA発現量が減少した。 これまでの結果と当該年度の結果から、三叉神経節内のサテライトグリア細胞がサイトカインを遊離することにより、痛みの伝達に関連していること、グリア細胞機能を抑制することにより、侵害受容刺激を制御することが可能であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に予定していたサテライトグリア細胞を興奮させるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)のラット三叉神経節への直接投与による痛み行動変化の観察、サテライトグリア細胞機能抑制薬とCGRPの三叉神経節への投与によるラット顔面部の痛み行動変化の観察、サテライトグリア細胞内での機能変化の観察を実施した。 その結果、CGRPを三叉神経節に直接投与したところ、投与6時間後に痛み行動反応の増加が観察された。また、CGRP投与後、サテライトグリア細胞の活性が観察され、炎症性サイトカインIL-1β、抗炎症性サイトカインIL-1RA、ニューロンの活性化を示すNaV1.7のmRNA発現の増加が観察された。さらに、グリア細胞機能抑制作用のあるミノサイクリンを三叉神経節に直接投与することにより、CGRPで誘発された痛み行動反応が軽減されるとともに、サテライトグリア細胞活性の低下、IL-1βおよびIL-6のmRNA発現量の減少が観察された。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は口腔顔面痛モデルラットへのサイトカイン関連物質の直接投与あるいはグリア細胞機能抑制薬投与による痛み行動の変化を計測し、そのメカニズム解明に関する実験を実施する予定である。 眼窩下神経結紮モデルラットの三叉神経節に、抗炎症性サイトカインあるいは炎症性サイトカイン受容体抗体を直接投与することによる痛み行動変化を観察する。また、眼窩下神経結紮モデルラットにグリア細胞機能抑制薬を全身投与した場合の痛み行動の変化を観察する。痛み行動に変化が観察される場合、そのメカニズム解明を進める。
|