研究課題/領域番号 |
18H02994
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
黒嶋 伸一郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (40443915)
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研究分担者 |
中野 貴由 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30243182)
住田 吉慶 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (50456654)
柴田 恭明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (80253673)
大塚 正人 東海大学, 医学部, 准教授 (90372945)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ビスフォスフォネート製剤 / デノスマブ / BRONJ / DRONJ / 動物モデル / 病因 / 免疫病理 |
研究実績の概要 |
2003年に初めてビスフォスフォネート(BP)製剤関連顎骨壊死(BRONJ)が報告されたが,現在でもONJの発症メカニズムは不明で確定的な治療法はない.近年では抗RANKL抗体製剤,新規骨粗鬆症薬,ならびに血管新生抑制薬でもONJの発症が報告されており,治療法開発のためには,各種薬剤が引き起こすONJの総合的な理解と発症機構の解明が必要不可欠である.一方申請者らは2011年からONJの基礎・臨床研究に取り組み,その過程で抜歯誘発性高頻度発現型マウスBRONJを開発し,脂肪組織由来Stromal Vascular Fraction(SVF)細胞の移植がマウスBRONJを緩解することを証明したが,臨床応用可能な治療法の開発には至らなかった. そこで本研究課題は,各種薬剤がもたらすONJの発症機構(病因)の解明と,種々の細胞移植を実験ツールとした治癒機構の解明から病因関連分子と治癒関連分子を同定し,それらを基盤とした臨床応用可能な新しい分子標的治療法を開発することを目的とした. 本年度は、現在まで高率で発現することが困難であった高頻度発現型抗RANKL抗体誘発性顎骨壊死(DRONJ)モデルの開発に成功し、既に開発済みの高頻度発現型BRONJモデルとの比較解析を詳細に行うことができた。 その結果、高頻度発現型BRONJ様病変と高頻度発現型DRONJ様病変は、1)肉眼的所見は同じ、2)3次元的構造(硬組織)は同じ、3)組織形態学的な特徴(生きている骨、壊死骨、骨細胞密度、空の骨小腔、炎症性細胞浸潤状態、コラーゲン産生程度など)は同じ、という所見を得た(定量解析済み)。しかしながら、免疫病理学的には、脈管形成の程度とマクロファージの分布状態に大きな相違があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、今まで高頻度で発現させることができなかった抗RANKL抗体誘発性顎骨壊死様病変を高頻度で発現できることに成功し、さらに開発済みの高頻度発現型BRONJモデルと詳細な比較解析を行い、肉眼的所見と組織学所見は酷似するが、免疫病理学的には2つの病変は大きく異なることが分かった。以上のことはBRONJとDRONJの病因が異なることを示唆しており、今後の研究発展に大きく貢献できると判断したため、(2)おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、顎骨壊死を惹起する薬剤である、新規骨粗鬆症薬(Romosozumab:Amgen社に齧歯動物用の抗体を供与してもらえるか交渉中)や血管新生抑制薬(申請者は、血管抑制作用を持つVEGFAに対する中和抗体を使って論文を報告済み)を用い、さらなるモデル開発に挑戦する。さらに、現在までは抗癌剤を併用して作成していたが、骨吸収抑制薬、新規骨粗鬆症薬、ならびに血管新生抑制薬を単独投与した顎骨壊死モデルマウスの作成も同時に進める。開発された種々の高頻度発現型顎骨壊死モデルを詳細に比較解析することで、病態の相違を完全把握し、病因関連分子の同定に挑む。具体的な研究方法としては、薬剤関連顎骨壊死様病変を作成後にマウスを屠殺し、上顎、長管骨、顎下リンパ節、脾臓、骨髄、血清を採取する。その後、肉眼的所見、3次元的構造解析、組織形態学的解析、免疫組織化学的解析、遺伝子学的解析、タンパク質解析、血清解析などを行って、各種顎骨壊死様病変に共通する病態と相違する病態を明らかにする。
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