研究課題
2003年に初めてビスフォスフォネート(BP)製剤関連顎骨壊死(BRONJ)が報告されたが,現在でもONJの発症メカニズムは不明で確定的な治療法はない.近年では抗RANKL抗体製剤,新規骨粗鬆症薬,ならびに血管新生抑制薬でもONJの発症が報告されており,治療法開発のためには,各種薬剤が引き起こすONJの総合的な理解と発症機構の解明が必要不可欠である.一方申請者らは2011年からONJの基礎・臨床研究に取り組み,その過程で抜歯誘発性高頻度発現型マウスBRONJを開発し,脂肪組織由来Stromal Vascular Fraction(SVF)細胞の移植がマウスBRONJを緩解することを証明したが,臨床応用可能な治療法の開発には至らなかった.そこで本研究課題は,各種薬剤がもたらすONJの発症機構(病因)の解明と,種々の細胞移植を実験ツールとした治癒機構の解明から病因関連分子と治癒関連分子を同定し,それらを基盤とした臨床応用可能な新しい分子標的治療法を開発することを目的とした.本年度は,BRONJとDRONJの組織病理学的および免疫病理学的検索を詳細に行った.その結果,BRONJとDRONJは肉眼的および組織病理学的にはほとんど同じであったが,免疫組織病理学的には大きく異なっていることを突き止めた.すなわち,血管形成阻害はBRONJとDRONJの両者で認められたが、DRONJではより重篤な血管形成阻害が認められた.また,リンパ管形成阻害はBRONJだけに認められ、さらに直径が20マイクロメートル以上の管腔様構造を構成しているF4/80LYVE-1両陽性細胞もBRONJだけに認められた.以上のことはBRONJとDRONJの病態は異なっており,それに起因して病因も異なる可能性が考えらえた.なお,マウス用ロモソズマブについては現在製薬会社との交渉を行っている段階である.
2: おおむね順調に進展している
本年度は、BRONJとDRONJの病態を詳細に解明することで、両者が免疫病理学的に大きく異なることを突き止めたため、おおむね順調に進展していると判断した.
次年度は,1)ロモソズマブ関連顎骨壊死モデルの作成2)材料学的にBRONJとDRONJの骨配向性がどのように変化しているのかを検討3)細胞移植によるBRONJ/DRONJ寛解モデルから病因や病態の詳細解析を行う予定である.
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
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