研究課題/領域番号 |
18H02995
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
細川 隆司 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (60211546)
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研究分担者 |
近藤 祐介 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (00611287)
柄 慎太郎 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (20759386)
向坊 太郎 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (50635117)
正木 千尋 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (60397940)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 骨細胞 / メカノセンサー / 骨吸収 |
研究実績の概要 |
抜歯された後の歯槽骨(顎骨歯槽突起)は吸収するが、その吸収量やスピードは個 人差があり、局所的あるいは、全身的要因が骨吸収パターンに影響を与えているこ とや、血中estrogen levelに関連があることなど、研究代表者らにより様々な事象が明らかにされてきた。また、インプラント治療における骨移植(骨造成)術後の吸収も臨床上の大きな問題 になっている。しかし、現状では、この移植骨の術後吸収を防ぐ有効な手段はない。 骨研究においては、長い間『骨芽細胞』と『破骨細胞』が主な研究対象となってい た。これら2つの細胞は、動きがダイナミックであり,比較的培養も容易であるこ とから、多くの研究成果が得られてきたのも事実である。しかし、Ikedaらにより DMP-1をターゲットとしてジフテリア毒素レレプター遺伝子を組み込み骨細胞を特異的に死滅させたマウスを作り、尾部懸垂を施し後肢に荷重がかからないようにす ると、健常マウスで起こる骨量の減少が,骨細胞を死滅させたマウスではほぼ完全 に抑制されることが明らかにされたことなどから、骨細胞は、生理的骨吸収の司令 塔になっている可能性が出てきている。 歯槽骨の吸収や移植骨の吸収は、力学刺激 と密接に関わっていると思われ、その主要なコントロールを骨芽細胞ではなく骨細 胞が行っている可能性が極めて高い。そのメカノセンサーは、骨細胞のcilia(繊毛) であると考えられている (Gerdes JM, et al. Cell, 2009他)が、骨吸収を促進させるシ グナル伝達メカニズムはほとんど分かっていない。そこで、本研究においては、 (1)人工無重力装置を用いた物理刺激の遮断による骨細 胞のcilia(繊毛)関連シグナル伝達分子の挙動変化 (2)超音波等の物理刺激による 骨細胞への影響 (3)骨吸収を制御する生体分子について明らかにすることにより、 生理的な骨吸収を臨床的に制御し抑制する分子医学的アプローチを可能にすること を目指すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
骨細胞(IDG-SW3)の3D-クリノ(人工無重力環境)での培養において、細胞の分化マーカーの発現パターンが安定せず、原因の追及に予想外に時間を要している。1G環境(通常の培養環境)においても、分化マーカーの発現が安定しなかったため、細胞を分与してもらったBonewaldの研究室に問い合わせ、再度、別ロットの細胞株を入手し分化マーカーの1G環境での正常な発現パターンを確認し、改めて3D-クリノ(人工無重力環境)での培養に取り組んでいるところである。
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今後の研究の推進方策 |
株化骨細胞の微小重力環境での3D培養と,通常(1G)環境下での培養において発現量に差が認められる分子を網羅的に探索する。 1) 骨細胞(IDG-SW3)を通常3D培養(1G環境)と3D-クリノ(人工無重力環境)で培養する。(細川,田村,正木および連携研 究者:弓削 類(広島大学・教授)、研究協力者Linda Bonewald (Univ. of Missouri, Kansas City) 2) 1)で培養した骨細胞が破骨細胞に向かって出しているシグナルについて、1G環境と比較し,マイクロアレイを用いて網羅的 に検討する。(細川,田村,正木,近藤) 3) FGF-23,DMP1(Dentin Matrix Protain 1),Sclerostinなどの、既に報告されているシグナル分子に加え、Cilia関連シグナル 分子、Wntシグナル関連分子について、無重力環境と1G環境、および超音波刺激(Shiraishiら2012)による遺伝子発現の変化 をマイクロアレイやRT-PCR等で検討する。(細川,正木)
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