研究課題
口腔がんの転移に関連するエクソソームmiRNAのプロファイリングを行った.血管内皮細胞の細胞間接着,接着分子の変化への影響を解析し,これらmiRNA標的分子を同定し,腫瘍血管における発現とがん悪性度との関連を明らかにした.高転移性の癌細胞に特異的なエクソソームmiRNAの同定を試みた.高転移性・低転移性のがん細胞の培養上清から超遠心法によりエクソソームを精製し,CD9, CD63などの膜抗原の発現を確認した後miRNAを抽出した.miRNA アレイにより転移能の異なるがん細胞エクソソーム内のmiRNAレベルを比較し,絞り込んだmiRNAについてTaqman-qPCR法で再現性を確認後に,高転移性がん由来エクソソームmiRNAの血管内皮への影響の解析をin vitroで行った. 同定されたmiRNAを正常血管内皮細胞に導入したもの,ならびに高転移性,低転移性がんそれぞれのエクソソームを処理した正常血管内皮においてその遺伝子発現を比較する.共通して発現亢進している分子の中から,血管内皮細胞のE-selectin, ICAM1, ICAM2, VCAMなどの接着分子ならびにVE-cadherin, ZO-1などの内皮細胞間接着分子の発現変動に注目したところ,血管内皮細胞の接着分子の発現亢進.VEcadherinの発現低下をもたらすことがわかった.上記で選別されたmiRNAを正常血管内皮細胞に導入し細胞間接着分子や接着分子mRNA発現を増加させるものをmiRNAXとして同定した.さらに,エクソソームmiRNAXによる血管内皮細胞の形質変化を解析した.特にがん細胞の血管内皮細胞への接着性をadhesion アッセイ,血管内皮のモノレイヤーに対するがん細胞の浸潤性をトランスウェルの浸潤アッセイにより解析血管内皮細胞のバリア機構が減弱することがわかった.
2: おおむね順調に進展している
計画したことは概ね順調に進んだが,miRNAの機能が思いのほか血管内皮細胞に対し多岐にわたることがわかり,当初の予定よりも多くの分子について解析を進めたことは当初の計画に追加して実施することとなった.
高転移性がんエクソソームmiRNAXの標的分子をデータベースで絞り込んだあとに,miRX導入による正常血管内皮細胞の発現変動解析 により同定する.さらに網羅的なシグナル解析ソフトウェアであるIngenuity Systems Pathway Analysis (IPA)を用いてがん細胞由来miRNAがマウスの腫瘍血管内皮細胞の遺伝子発現型とどのように関わるのかを解析する.in vivo腫瘍モデルにおいて血管内皮におけるmiRNAXならびに標的分子の発現を解析する.ヒトがん細胞を移植したマウス腫瘍モデルから分離したマウス腫瘍血管内皮細胞ならびに転移先臓器血管内皮におけるヒトmiRNAXの検出の有無を解析することで示唆することができる. その後に臨床検体を用いた癌の悪性度と血中エクソソーム内miRNAXのレベルの関連についても解析を加える.また,miRNAXの標的によるがんの転移の抑制が起こるのか,in vivo腫瘍モデルを用いて検証する予定である.
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 1件、 招待講演 9件)
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