研究課題/領域番号 |
18H02997
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大久保 直登 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (00553207)
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研究分担者 |
北川 善政 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (00224957)
村田 勝 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (00260662)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歯根膜幹細胞 / 象牙質移植材 / ハイブリッド移植材 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、既存の骨再生医療用移植材では対応が困難な顎骨内良性腫瘍摘出術に伴う顎骨内の区域切除後などに生じる顎骨内大型骨欠損の再生に対応しうる新規の骨再生移植材を開発することである。本技術開発に成功すれば、骨再生技術が向上することにつながり、これにより口腔外科手術レベルの向上、および顎骨切除術後に生じる著しいQOLの低下を防止することにつながることが期待され、本研究テーマの意義は大変大きいと考えている。本研究最大の特徴は、①『象牙質移植材(DDM)』と②『幹細胞性の高い新規歯根膜幹細胞(PDLSC)』の2種類の独自特許技術を融合させDDM/PDLSCハイブリッド移植材として併用することで大型骨欠損部の骨再生治療を実現させることである。そのための目標課題として、『①の最大の欠点であった自家移植の改善策を検討し異種移植ベースのDDM移植法を完成させること』、『②の免疫寛容性を利用し、ヒト抽出PDLSCを他家・異種移植ベースにその安全性を確認し応用するための最適化されたプロトコールを作成すること』を設定した。 2年目の研究実績として、①においてはDDMの原料としての異種動物の選定が終了し、この選定過程において、DDMの新たな加工方法及び利用方法の開発に成功した。また選定した異種動物の象牙質をヒト医療用の素材として使用することに関して、『生物由本原料基準』に適合しなければ現実的な使用は困難であるが、本件に対し、PMDAの対面助言を行い、本移植材の使用に関して、上記の基準に適合するという判断を得ることができた。 一方、②の歯根膜幹細胞の効率的な抽出方法においても、培養条件に工夫を加えることで、歯根膜組織中には約0.1%の割合でしか存在しないといわれているマラッセの上皮遺残等の上皮組織由来の歯根膜上皮系幹細胞を、圧倒的に数で勝る間葉系幹細胞に淘汰されることなく抽出できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の2大テーマとして、『①の最大の欠点であった自家移植の改善策を検討し異種移植ベースのDDM移植法を完成させること』、『②の免疫寛容性を利用し、ヒト抽出PDLSCを他家・異種移植ベースにその安全性を確認し、応用するための最適化されたプロトコールを作成すること』を設定している。 1年目の研究実績として、①においてはDDMの原料としての異種動物の選定が終了し、この選定過程において、DDMの新たな加工方法及び利用方法の開発に成功した。また、異種移植ベース技術であるため、最終的にヒト医療に応用できなければならないが、その過程において最も重要であるのが、本移植材が生物由来原料基準に適合するか否かである。これをクリアしなければ、優良な移植材であっても国内において、ヒト医療に本技術を応用できる可能性はない為である。この問題に対し、2019年度中にPMDA対面助言を実施し、上記の基準に適合するとの判断を得ることができた。これにより、本移植材の医療応用に対する実現性が大きく高まったこととなる。 一方、②の歯根膜幹細胞の効率的な抽出方法においても、培養条件に工夫を加えることで、歯根膜組織中には約0.1%の割合でしか存在しないといわれているマラッセの上皮遺残等の上皮組織由来の歯根膜上皮系幹細胞を、圧倒的に数で勝る間葉系幹細胞に淘汰されることなく抽出できることを見出した。ここで抽出されてきた歯根膜由来上皮系幹細胞は、これまでの幹細胞では確認されていない非常にユニークな特徴を有すること、また、プライマリー細胞であるにもかかわらず、多継代による多分化能力の低下が起こりにくいことを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
①のテーマにおいてはDDMの原料としての異種動物の選定が終了し、この選定過程において、DDMの新たな加工方法及び利用方法の開発に成功した。また、素材動物の使用に関するPMDAの判断を仰ぎ、適合の結論を得た。これにより、本移植材の医療応用に対する実現性が大きく高まったこととなる。①の今後の研究推進方針として、この新たな加工方法による治療効果に関して、まずは単独でどこまでの治療効果を示すかにおいて、適応範囲の開拓も含めて行っていく。これに関して、DDM単独で得られた治療効果は、ここに②の歯根膜幹細胞をハイブリッド移植材として加えることで、さらに治療効果が向上することが期待されるため、本テーマの意義は非常に高い。 一方、②のテーマである歯根膜幹細胞の効率的な抽出方法においても、我々独自の方法で、歯根膜由来上皮系幹細胞を抽出することに成功した。本幹細胞は、これまでの幹細胞では確認されていない非常にユニークな特徴を有すること、また、プライマリー細胞であるにもかかわらず、多継代による多分化能力の低下が起こりにくいことを確認した。②のテーマにおける今後の研究推進方針として、①で新たに開発したDDM形態上で幹細胞を様々な条件で培養し、その培養状態(DDMコート状態)を電子顕微鏡による形態学的な解析や、細胞増殖試験などによる機能的な解析を行う事で、歯根膜幹細胞のDDMコート最適化プロトコールを検討することで本研究の最終開発目標である『DDM/PDLSC ハイブリッド移植材』の完成度を高めることを目標とする。さらに、このプロトコールは、DDMのみならず、チタン金属に対するコートにも応用できると考えており、この歯根膜幹細胞を応用した、歯根膜付きインプラント技術の開発につなげたいと考えている。
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